『クリムゾン・ピーク』
2月1日に観た。
「幽霊は実在する」と語る主人公のモノローグから始まり、エンドロール直前にはやはり「幽霊は実在する」のモノローグで終わる映画だった。そう、幽霊は実在する。
20世紀初頭のアメリカでとある裕福な実業家の令嬢(小説家志望)である主人公がイギリスから来たイケメン貴族に口説かれて彼の地の古いお屋敷でともに暮らすことになる...というベタベタな前半の流れは「いまどきコバルト文庫でもやらねーぞおい」と思わずつっこみたくなったが、監督が「この映画は、ゴシック・ロマンスのジャンルにおいて、典型的かつ昔ながらの壮大なハリウッド作品へ立ち返ろうとする私なりの試みだ」と述べるように、重ね塗られた過剰なほどのテンプレ様式美こそがこの映画の真髄であるのだろう。
これで下手にアクションシーンとかが入ると一気に全体が台無しになってしまうところだが、構成としてそれは慎重に避けられているように感じた。
とにかく美術が豪華で美しい。特撮の粋を凝らした極上の幽霊屋敷に圧倒される。前提となっているであろうホラーの古典的名作が分かっていればもっと理解が深まるのかもしれないが、それを抜きにしても充分楽しめるし目の保養になる。
視覚的にはたいへん贅沢な時間を過ごすことができた。
あえて個人的な欲を言わせてもらうとすれば、そもそも幽霊が全然怖くないんだよね。恨みを抱えた幽霊たちにもっと活躍の場面があってもよかったかもしれない。