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【メモ】民俗学者キャラクターまとめで一年を振り返る2021

 

 

自分用メモ。民俗学者キャラクターでこの一年を振り返るというよくわからない趣旨の記事だが、思いついてしまったのでまとめておこうと思う。

というか、実は前回、前々回の記事から民俗学者キャラクターのリサーチは地味に続けていたのだけれども、どこかでいちど簡単にでもまとめるか、読めるものにしておかないと、自分の中で情報がごちゃごちゃになってわからなくなってしまいそうなので、あくまで自分の備忘録として一覧にしておこうと思った次第。

そういうわけで(どういうわけで?)、今年発表されたマンガ、アニメ、映画、ドラマ、ゲーム、小説のうち、民俗学者キャラクター、あるいは作品内で「民俗学に詳しい」とされる「民俗学者っぽい」キャラクターが出ている作品を中心に、時系列順に以下に一覧化してみた。

 

 

民俗学者キャラクター登場作品一覧2021

1月
6日 [マンガ] 梢子「氷雨降らば恋契り」が『COMICフルール』(KADOKAWA)で連載開始、民俗学を専攻する大学院生が主人公のBLマンガ(→9月単行本発売、全1巻)。
15日 [マンガ]ジェラート『神に愛された花嫁~運命を共にする二人~ 大和編 Vol.0』(SMART GATE Inc.)が配信、離島の村を調査している民俗学の准教授が登場。[小説] 高田崇史『鬼棲む国、出雲 古事記異聞』(講談社文庫)、古河樹『氷室教授のあやかし講義は月夜にて 1』(富士見L文庫)が刊行。
20日 [小説] 相川真『京都伏見は水神さまのいたはるところ 6 綺羅星の恋心と旅立ちの春』(集英社オレンジ文庫)、石川宗生『半分世界』(創元SF文庫)が刊行。
22日 [マンガ] 鷹取ゆう『ただいま収蔵品整理中! 学芸員さんの細かすぎる日常』(河出書房新社)が刊行、主人公の大学時代の同窓で郷土資料館で民俗学を研究する学芸員が登場。(R18)コハル『若旦那は、婚前交渉できません。上 / 下』(ブライト出版)が上下巻同時刊行、大学で助教をしている民俗学研究者の女性が主人公の見合い相手として登場。[小説] 三津田信三『死相学探偵最後の事件』(角川ホラー文庫)が刊行、死相学探偵シリーズ完結。
31日 [マンガ] 蝶野飛沫『雷様と縁結び 3』(69(ロッキュー))が配信開始(電子版のみ)、主人公が民俗学に詳しい青年。

 

2月
3日 [小説]佐崎一路『あたしメリーさん。いま異世界にいるの……。2』(新紀元社)が刊行。
4日 [マンガ]近藤憲一『ダークギャザリング 6』(集英社)が刊行。
5日 [小説] 吉村達也『血洗島の惨劇』(実業之日本社文庫、復刊)が刊行。
10日 [小説] 睦月影郎『キャンパスの聖女』(双葉文庫)が刊行。
16日 [小説] 椎名蓮月『あやかし主従のつれづれな日々 何度でもめぐりあう』(ポルタ文庫)が刊行。
20日 [小説] 蒼空チョコ『おとなりさんの診療所 獣医の祖母と三つの課題』(ことのは文庫)が刊行。
21日 [アニメ] アニメ『怪物事変』(亜細亜堂)第7話「故郷」が放送、狂気の民俗学者蓼丸昭夫(声:石田彰)が登場。
25日 [小説] ほしおさなえ『紙屋ふじさき記念館 カラーインクと万年筆』(角川文庫)が刊行、民俗学者キャラクターは登場しないが主人公が長野県飯田市に実在する柳田國男館(飯田市美術博物館の付属施設)に行くエピソードがある。

 

3月
5日 [マンガ](R18) 肉そうきゅー。「精ヲ喰ラフ鬼ノ蕾」が『コミックグレープ』Vol.89(GOT)で連載開始(電子版のみ)、民俗学の老教授のもとで不老不死の美女の伝説について研究している青年が主人公。
17日 [マンガ] zinbei 漫画,羽柴実里 原作「酒と鬼は二合まで」が『マンガUP!』(スクウェア・エニックス)で連載開始、第1話冒頭の大学の民俗学の講義の場面でジャージ姿の教員が酒呑童子の話を紹介している(→8月単行本第1巻発売、以下続刊)。[小説] 宮澤伊織『裏世界ピクニック 6 Tは寺生まれのT』(ハヤカワ文庫JA)が刊行、主人公の所属する大学のゼミの教授が民俗学の研究者の中には、民俗学イコール妖怪と結びつけられるのにうんざりして、うちでは妖怪研究はできませんとか言っちゃう人もいるみたいだけど」と語る台詞がある。
19日 [小説] 高田崇史QED 源氏の神霊』(講談社ノベルス)が刊行。
23日 [小説]中村まさみ『学校の怪談5分間の恐怖 理科室から聞こえる』(金の星社)が刊行。
26日 [マンガ] 中島千晴 漫画, 大塚英志 原作『恋する民俗学者 1 柳田國男編』、同『恋する民俗学者 2 田山花袋編』(KADOKAWA)、二巻同時刊行。[ゲーム] 民俗学者がすでに死んでいるインディーズホラーゲーム『真砂楼』(DorsalFin Studio)が配信開始(→Nintendo Switch版が7月8日発売)。

 

4月
1日 [小説] 水城正太郎『異界心理士の正気度と意見 1 いかにして邪神を遠ざけ敬うべきか』(HJ文庫)が刊行。
4日 [マンガ]天野明「鴨乃橋ロンの禁断推理」第18話「夜蛇神様殺人事件①」が『少年ジャンプ+』(集英社)に掲載配信、失踪した民俗学者の兄を探すエピソードで、蛇神伝説を調査している別の民俗学者もゲストで登場。
5日 [マンガ](R18)香吹茂之「女神家の一族」が『COMIC夢幻転生』2021年05月号(ティーアイネット) で連載開始、民俗学を研究している大学院生が探偵役のエロミステリー。
9日 [マンガ]ジェラート『神に愛された花嫁~真実に立ち向かう二人~ 要編 vol.0』(SMART GATE Inc.)が配信、離島の村を調査している民俗学の准教授が登場。[小説] 千冬『百々とお狐の本格巫女修行』(SKYHIGH文庫)が刊行。
14日 [小説] 芦花公園『ほねがらみ』(幻冬舎)、太田忠司『麻倉玲一は信頼できない語り手』(徳間文庫)が刊行。
20日 [小説] 長谷川夕『月の汀に啼く鵺は 巷説山埜風土夜話の相続人』(集英社オレンジ文庫)が刊行。
23日 [小説] 櫛木理宇ホーンテッド・キャンパス 待ちにし主は来ませり』(角川ホラー文庫)、吉村喜彦『炭酸ボーイ』(角川文庫)が刊行。
30日 [マンガ] 吉川景都「こまったやつら」が『ヤングキングアワーズ』2021年6月号(少年画報社)で連載開始、大学の民俗学研究会が舞台の青春劇。第3話(『ヤングキング アワーズ』2021年8月号掲載)からは文化人類学者で民俗学者の廣田龍平氏が学問アドバイザーを務めている。[小説] 丸木文華『フェロモン探偵 花嫁になる』(講談社X文庫)が刊行。

 

5月
6日 [マンガ]吉元ますめくまみこ」第95話が『月刊コミックフラッパー』2021年6月号(KADOKAWA)に掲載、過去エピソードの中で主人公の通う学校の新任教師の大学院時代の専門が民俗学であると思われる描写があり民俗学者らしき大学教授も登場。
7日 [小説] 長崎尚志『キャラクター』(小学館文庫)が刊行、同名映画のノベライズ版だが映画には民俗学者キャラクターは登場せず。
8日  [小説] 波摘 著, noprops,黒田研二 原作『青鬼 調査クラブ 4 怪物たちの島を攻略せよ! 』(PHPジュニアノベル)が刊行。
14日 [小説] 高田崇史『オロチの郷、奥出雲 古事記異聞』(講談社文庫)が刊行。 
20日 [小説] 阿刀田高『怪しくて妖しくて』(集英社文庫)が刊行。
21日 [小説] 芦花公園『異端の祝祭』(角川ホラー文庫)、澤村御影『准教授・高槻彰良の推察 6 鏡がうつす影』(角川文庫)が刊行。

 

6月
2日 [マンガ](R18)つくも号「群れ落ちる白い花」第2話が『Adam』volume.6(ブレインハウス)に掲載配信(電子版のみ)、民俗学者の男と囚われの美少年の因習村BL。
4日 [マンガ]近藤憲一『ダークギャザリング 7』(集英社)が刊行。
7日 [小説] 沖田円『猫に嫁入り 〜忘れじの約束〜』(小学館文庫 キャラブン!)が刊行。
10日 [小説]おおぎやなぎちか『読書の時間 9 ぼくらは森で生まれかわった』(あかね書房)が刊行。
15日 [小説] 北森鴻『香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉』(講談社文庫)、三津田信三『碆霊の如き祀るもの』(講談社文庫)、内藤了『蠱峯神 よろず建物因縁帳』(講談社タイガ)、刊行。
18日 [マンガ]浅田有皆 漫画, ソニー・インタラクティブエンタテインメント原作, Project SIREN team 監修, 酒井義 脚本『SIREN ReBIRTH 7』(集英社)が刊行配信(電子版のみ)。[映画] 越谷オサムの小説が原作の映画『いとみち』が青森県で先行上映開始(6月25日に全国公開)、豊川悦司が父親の民俗学者を演じる。
22日 [マンガ] 鎌谷悠希「ヒラエスは旅路の果て」第8話が『モーニング・ツー』2021年8号(講談社)に掲載、不死の秘密を聞き出そうとする民俗学者が登場。
23日 [マンガ]吉元ますめくまみこ 16』(KADOKAWA)が刊行。
25日 [マンガ] (R18)ムコQ『ナマズを抱く』(海王社)が刊行配信(電子版のみ)、民俗学を専攻する大学生が主人公。[小説] 水沢あきと『CEO生駒永久の「検索してはいけない」ネット怪異譚 IT社長はデータで怪異の謎を解く』(メディアワークス文庫)が刊行。

 

7月
7日 [マンガ]藤丸豆ノ介 漫画, 友麻碧 原作, あやとき キャラクター原案「浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は君の名前をまだ知らない。」が『ビーズログCHEEK』(Pixiv / KADOKAWA)で連載開始、主人公たちが高校の民俗学研究部に所属。
14日 [小説] 緑川聖司『図書室の怪談 死者の本』(ポプラキミノベル)が刊行。
16日 [マンガ] 室たた「花の婿入り」が『プチコミック』2021年8月号増刊 (小学館)に読切掲載、旧家の娘と民俗学を学ぶ大学院生の恋愛マンガ。[小説] 澤村御影『准教授・高槻彰良の推察EX』(角川文庫)が刊行。
19日 [マンガ]浅田有皆 漫画, ソニー・インタラクティブエンタテインメント原作, Project SIREN team 監修, 酒井義 脚本『SIREN ReBIRTH 8』(集英社)が刊行配信(電子版のみ)、「SIREN ReBIRTH」シリーズが完結。また、日野塔子「人魚の蜜は甘く滴る~あなたの種をください~」第7話が『恋愛宣言』(大都社/秋水社)で掲載配信(電子版のみ)、人魚伝説を調べる民俗学の准教授が登場。
20日 [小説] しほろ丸夏『昼は愛犬、夜は愛人』(ラルーナ文庫オリジナル)が刊行配信(電子版のみ)。
21日 [小説] 石川智健『私はたゆたい、私はしずむ』(中公文庫)、波摘 著, noprops,黒田研二 原作『青鬼 図書館の透明人間 』(PHPジュニアノベル)が刊行。
26日 [マンガ] ヨリフジ「キサラギ大学民俗学研究室」が『月刊コミックゼノン』2021年9月号(コアミックス)に読切掲載、大学の民俗学研究室が舞台の妖怪退治ストーリー(なお、作者は大学で民俗学を学んでいたとのこと)。
27日 [マンガ] 尾灯自 漫画, 澤村御影 原作, 鈴木次郎 キャラクター原案『准教授・高槻彰良の推察 2』(KADOKAWA)が刊行。
29日 [ゲーム]『真 流行り神3』(日本一ソフトウェア)が発売、シリーズ旧作にも登場した民俗学者キャラクターの霧崎水明が登場。[小説] 三津田信三『忌名の如き贄るもの』(講談社)が刊行。
30日 [マンガ](R18) 毒でんぱ『あまとろえっち』(GOT)が刊行、収録作品「りんりんえっち」に民俗学の学会で研究発表をすると意気込む留学生が登場。

 

8月
4日 [マンガ]天野明『鴨乃橋ロンの禁断推理 3』(集英社)が刊行。
6日 [マンガ] zinbei 漫画,羽柴実里 原作『酒と鬼は二合まで 1』(スクウェア・エニックス)が刊行。
7日 [ドラマ] 澤村御影の同名小説が原作のテレビドラマ『准教授・高槻彰良の推察』(東海テレビWOWOW)が放送開始、Season1は8月7日~9月25日、Season2は10月10日~11月28日に放送。民俗学の准教授をHey!Say!JUMPの伊野尾慧が演じる。
12日 [マンガ]河内遙『涙雨とセレナーデ 8』(講談社)が刊行。[小説] 雪村花菜『くらし安心支援室は人材募集中 オーダーメイドのおまじない』(富士見L文庫)が刊行。
15日 [マンガ] (R18)牧原もも「淫獣の巫女~代理巫女を襲う被虐の民間信仰の罠~」が『蜜愛恋獄 Vol.9 ~特集 淫らな罠に堕ちた女たち 蜜愛恋獄特集版』(ユサブル)に掲載配信(電子版のみ)、民俗信仰を研究している大学院生の女性主人公が民俗学者の教授から故郷の村の巫女の代役を頼まれる。
20日 [小説] 紅玉いづき「池袋裏百物語 明烏准教授の都市伝説ゼミ」が『小説現代』2021年9月号(講談社)に掲載(朗読舞台との連動企画)。
24日 [小説] 大島清昭『影踏亭の怪談』(東京創元社)、荻原規子エチュード春一番 第三曲 幻想組曲 [狼]』(角川文庫)が刊行。
31日 [小説] 長江俊和『出版禁止 いやしの村滞在記』(新潮社)が刊行。
[ゲーム] また、正確な日時は不明だが、ゲーム『原神』(miHoYo)で8月に発生したクエスト「応答せよ異郷人」に宮島という民俗学者が登場した。

 

9月
5日 [マンガ] GAKU「送り火の島」が『ジャンプルーキー!』(集英社)に掲載配信、大学で民間伝承を研究している男が送り火の風習の調査のために離島を訪れる。
8日 [マンガ] 盆ノ木至『吸血鬼すぐ死ぬ 18』(秋田書店)が刊行、同巻おまけの人物紹介によりロナルドの妹ヒマリが大学で吸血鬼民俗学を専攻していることが明らかに。
12日 [ゲーム] 『文豪とアルケミスト』(DMM GAMES)に柳田國男(声:小野大輔)と折口信夫(声:興津和幸)が実装されることがゲームTwitter公式アカウトで発表される。のち、9月21日にイベント「調査任務 「遠野物語」ヲ探索セヨ」の累計報酬として柳田國男が、10月1日にイベント「調査任務 「死者の書」ヲ探索セヨ」の累計報酬として折口信夫がそれぞれ実装される。
15日 [小説] 相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(講談社文庫)、高田崇史『京の怨霊、元出雲 古事記異聞』(講談社文庫)が刊行。
16日 [ドラマ] 茨城県県北地域の地元PR用のウェブドラマ『県北高校フシギ部の事件ノート』(テレビマンユニオン)が配信開始、前編は16日から、後編は22日からそれぞれ配信。高校の部活ドラマで、折口ミコト(演:凛美)、宮本ナミ(演:其原有沙)、柳田(演:新原泰佑)という、それぞれ折口信夫宮本常一柳田国男をモチーフとしたキャラクターが登場。[ゲーム] 『シンスメモリーズ 星天の下で』(MAGES.)が発売、登場人物の一人が日本の民俗学を学ぶために中国から来た留学生。[小説] 井上悠宇『誰も死なないミステリーを君に 眠り姫と五人の容疑者』(ハヤカワ文庫JA)が刊行。
17日 [マンガ] 峰浪りょう『少年のアビス 6』(集英社)が刊行、冒頭に松岡国男「野辺のゆきゝ」の一節が引用されている。また、梢子『氷雨降らば恋契り』(KADOKAWA)が刊行。
18日 [小説] 三津田信三『犯罪乱歩幻想』(角川ホラー文庫)が刊行。
24日 [小説] 小山内慧夢『氷の貴公子なのに過保護すぎです!~ひとりでキャンプしていたら異世界で山の神になってしまった件~』(夢中文庫)が刊行配信(電子版のみ)。
25日 [マンガ]吉川景都「モフモフ残酷民話研究会」が『ヤングキングコミックス』(少年画報社)で連載開始(電子版のみ)、民俗学を学ぶ女子大生が主人公のウェブトゥーン作品(同作者『こまったやつら』のスピンオフ)。

 

10月
4日 [マンガ] 森美夏 漫画, 大塚英志 原作『八雲百怪 5』(KADOKAWA)が刊行、『北神伝綺』『木島日記』に続く民俗学三部作が完結。 
6日 [小説] 三津田信三『白魔の塔』(文春文庫)が刊行。
13日 [マンガ] (R18)あるぷ「魔狂の湯」が『comicアンスリウム』Vol.103 2021年11月号(GOT)に掲載、アニメ化が発表される。民俗学者の青年が主人公の同作者「闇憑村」の続編。
15日 [小説] 古河樹『氷室教授のあやかし講義は月夜にて 2』(富士見L文庫)が刊行。
17日 [ドラマ]『鉄神ガンライザー クロニクル』(テレビ岩手)が放送開始、民俗学を研究する変人大学教授を松尾英太郎が演じる(~12月19日、全10話)。
19日 [小説] 樋口恭介 編『異常論文』(ハヤカワ文庫JA)が刊行。
20日 [マンガ]今市子百鬼夜行抄 29』(朝日新聞出版)が刊行。[小説] 相川真『京都伏見は水神さまのいたはるところ 7 ふたりの新しい季節』(集英社オレンジ文庫)が刊行。
21日 [小説] 越谷オサム『まれびとパレード』(角川文庫)が刊行、民俗学者キャラクターは登場しないが折口信夫「「とこよ」と「まれびと」と」がエピグラフに引用されているほか、妖怪が出てくる物語の舞台が「柳田県河鍋市」となっている。
22日 [マンガ] おかだきりん『進め! オカルト研究部 1』(双葉社)が刊行、作中に登場する日本オカルト研究振興協会会長の名前が「柳目國男」となっている。
29日 [マンガ]月野うた「卒業するまで、君が好き」第5話が『LIQQA』(wwwave comics)で掲載配信(電子版のみ)、主人公が作中作の二時間ドラマ(現代日本で生きる吸血鬼の恋物語)の中に登場する民俗学の大学教授の娘の台詞を読み上げる場面がある。 [小説] 太田忠司『鬼哭洞事件』(東京創元社)が刊行。また、篠田節子『失われた岬』(KADOKAWA)が刊行、民俗学者キャラクターは登場しないが物語の真相に迫る過程で「民俗学者が残したノート」を参照するというホラーゲームのような場面がある。

 

11月
1日 [小説] 茜たま『夜這いを決意した令嬢ですが間違えてライバル侯爵弟のベッドにもぐりこんでしまいました』(一迅社)が刊行、民俗学者キャラクターは出てこないが、登場人物が民俗学のレポートを書く場面があり「夜這い」と「民俗学」のイメージが結びつけられている例として挙げられる。
4日 [マンガ]天野明『鴨乃橋ロンの禁断推理 4』(集英社)、近藤憲一『ダークギャザリング 8』(集英社)が刊行。
9日 [小説] 奥泉光ゆるキャラの恐怖 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活3』(文春文庫)が刊行。
12日 [小説] 村田沙耶香『変半身』(ちくま文庫)、波摘 著, noprops,黒田研二 原作『青鬼 調査クラブ 5 呪いの絵画の謎を解け! 』(PHPジュニアノベル)が刊行。
18日 [小説] 高田崇史采女の怨霊 小余綾俊輔の不在講義』(新潮社)が刊行。
20日 [小説] 有栖川有栖『こうして誰もいなくなった』(角川文庫)が刊行。 
22日 [マンガ] 鎌谷悠希『ヒラエスは旅路の果て 2』(講談社)が刊行。
27日 [映画]短編映画『赫丹物語』が天劇キネマトロンアネックスで公開(イベント、映画『突然失礼致します!』特別上映会 in 天劇キネマトロンアネックス(1日目)において上映)、イラストレーターの女性と同棲する民俗学の准教授が登場。

 

12月
3日 [マンガ] 椎名明 漫画, 茜たま 原作「夜這いを決意した令嬢ですが間違えてライバル侯爵弟のベッドにもぐりこんでしまいました」が『ゼロサムオンライン』(一迅社)で連載開始。
9日 [小説] 三津田信三『赫衣の闇』(文藝春秋)が刊行。
15日 [小説] 内藤了『隠温羅 よろず建物因縁帳』(講談社タイガ)が刊行、よろず建物因縁帳シリーズが完結。
19日 [ドラマ] 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK)第40回「栄一、海を越えて」に、渋沢敬三(演:笠松将)が登場。
21日 [小説] 山村正夫湯殿山麓呪い村』(角川文庫、復刊)が刊行。
22日 [小説] 明野照葉『黒白の一族』(光文社)が刊行。
23日 [小説] 萩原麻里『巫女島の殺人 呪殺島秘録』(新潮文庫nex)が刊行。
25日 [小説] 三津田信三「怪民研」が『小説 野性時代』第218号 2022年1月号(KADOKAWA)で連載開始、「怪異民俗学研究室」を舞台とした新シリーズ。
27日 [マンガ] 尾灯自 漫画, 澤村御影 原作, 鈴木次郎 キャラクター原案『准教授・高槻彰良の推察 3』(KADOKAWA)が刊行。
28日 [マンガ](R18) 浪花道またたび「ハメ嬲り祭の夜」が『ANGEL倶楽部』2022年2月号(エンジェル出版)に掲載、大学で日本の民俗学を専攻している留学生が主人公。

 

 

 

上に並べたのは、あくまで個人的観測範囲の大雑把な把握であり、漏れや誤認もあるかと思うが、だいたいのところでは今年の民俗学者キャラクターを時系列順に概観できるようになっているのではないかと思う。
しかしこうして振り返ってみると、2021年は日本の民俗学者キャラクター史(?)にとって話題の多い年だったような気がする。
まず、しばらく途絶えていた大塚英志原作の中島千晴『恋する民俗学者』が既刊の内容も含めた大判本となって上下巻で完結。また、同じく大塚英志原作の森美夏『八雲百怪』の最終巻が発売、『北神伝綺』『木島日記』に続く民俗学三部作が堂々の完結を果たした。ほかにも、オンラインゲーム『文豪とアルケミスト』に柳田國男折口信夫が登場、またNHK大河ドラマ『青天を衝け』に渋沢敬三が登場するなど、マスの大きい作品のなかで実在の民俗学者を扱った事例が目立った。
また、アニメ『怪物事変』にCV石田彰民俗学者が登場、映画『いとみち』で豊川悦司民俗学者の父親役で出演、澤村御影の小説『准教授・高槻彰良の推察』がWOWOWでドラマ化されるなど、例年になく映像作品に民俗学者キャラクターが頻出した年でもあった。

マンガでは、吉川景都『こまったやつら』の連載が開始されたことが特筆される。同作品では、大学の民俗学研究会を舞台とした、いままでにないリアルな民俗学ストーリーが展開されている。
ほかのマンガ作品では、蝶野飛沫『雷様と縁結び』、ムコQ『ナマズを抱く』、梢子『氷雨降らば恋契り』など、なぜかオカルト系のBLマンガに民俗学者キャラクターがよく登場した。

小説では、北森鴻の旗師・冬狐堂シリーズ、香菜里屋シリーズが昨年に引き続きそれぞれ新装復刊。また、三津田信三の死相学探偵シリーズ、内藤了のよろず建物因縁帳シリーズが完結。死相学探偵はコミカライズも開始し、12月には三津田信三の新シリーズ「怪民研」の連載が『小説 野生時代』で始まった。ほかには、PHPジュニアノベルの「青鬼 調査クラブ」シリーズで、あやしいオカルト民俗学者がレギュラーキャラクターで登場を続けていることも書き加えておきたい。

来年の作品で判明しているところでは、NHKの朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』に戸次重幸が民俗学者役で出演することが判明しているほか、放送延期されたアニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 Final SEASON-浅き夢の暁-』に、原作ゲーム通りのシナリオであれば物語の真相に民俗学者キャラクターが重要人物としてかかわってくることが予想されている。

 

……昨晩遅くにこの記事を書くことを思い立って、ほぼ半日でまとめたのでだいぶ雑なまとめになってしまった。が、あえてあまり反省はせず、今後はむしろこれくらいのペースで頻繁にブログを更新する方向でいければいいなと思う。

 

 

 

※追記:2021/01/16、以下14点の情報を追記、文章を一部修正しました。

1月20日 [小説] 石川宗生『半分世界』
2月25日 [小説] ほしおさなえ『紙屋ふじさき記念館 カラーインクと万年筆』
4月23日 [小説] 吉村喜彦『炭酸ボーイ』
7月14日 [小説] 緑川聖司『図書室の怪談 死者の本』
7月21日 [小説] 石川智健『私はたゆたい、私はしずむ』
10月6日 [小説] 三津田信三『白魔の塔』
10月21日 [小説] 越谷オサム『まれびとパレード』
10月22日 [マンガ] おかだきりん『進め! オカルト研究部 1』
10月29日 [小説] 篠田節子『失われた岬』
11月20日 [小説] 有栖川有栖『こうして誰もいなくなった』
12月9日 [小説] 三津田信三『赫衣の闇』
12月21日 [小説] 山村正夫湯殿山麓呪い村』
12月22日 [小説] 明野照葉『黒白の一族』

 

※追記2:2021/01/29、以下5点の情報を追記、文章を一部修正しました。

4月14日 [小説] 太田忠司『麻倉玲一は信頼できない語り手』
5月20日 [小説] 阿刀田高『怪しくて妖しくて』
8月24日 [小説] 荻原規子エチュード春一番 第三曲 幻想組曲 [狼]』
11月9日 [小説] 奥泉光ゆるキャラの恐怖 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活3』
12月28日 [マンガ](R18) 浪花道またたび「ハメ嬲り祭の夜」

 

※追記3:2022/05/17、以下30点の情報を追記、文章を一部修正しました。

1月15日 [マンガ]ジェラート『神に愛された花嫁~運命を共にする二人~ 大和編 Vol.0』
1月22日 [マンガ](R18)コハル『若旦那は、婚前交渉できません。上 / 下』
2月3日 [小説]佐崎一路『あたしメリーさん。いま異世界にいるの……。2』
2月4日 [マンガ]近藤憲一『ダークギャザリング 6』
3月23日 [小説]中村まさみ『学校の怪談5分間の恐怖 理科室から聞こえる』
4月4日 [マンガ]天野明「鴨乃橋ロンの禁断推理」第18話
4月5日 [マンガ](R18)香吹茂之「女神家の一族」連載開始
4月9日 [マンガ]ジェラート『神に愛された花嫁~真実に立ち向かう二人~ 要編 vol.0』
5月6日 [マンガ]吉元ますめくまみこ」第95話
6月2日 [マンガ]つくも号「群れ落ちる白い花」第2話
6月4日 [マンガ]近藤憲一『ダークギャザリング 7』
6月10日 [小説]おおぎやなぎちか『読書の時間 9 ぼくらは森で生まれかわった』
6月15日 [小説]ほしおさなえ『菓子屋横丁月光荘 丸窓』
6月18日 [マンガ]浅田有皆 漫画, ソニー・インタラクティブエンタテインメント原作, Project SIREN team 監修, 酒井義 脚本『SIREN ReBIRTH 7』
6月23日 [マンガ]吉元ますめくまみこ 16』
7月7日 [マンガ]藤丸豆ノ介 漫画, 友麻碧 原作, あやとき キャラクター原案「浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は君の名前をまだ知らない。」連載開始
7月19日 [マンガ]浅田有皆 漫画, ソニー・インタラクティブエンタテインメント原作, Project SIREN team 監修, 酒井義 脚本『SIREN ReBIRTH 8』、日野塔子「人魚の蜜は甘く滴る~あなたの種をください~」第7話
7月21日 [小説]波摘 著, noprops,黒田研二 原作『青鬼 図書館の透明人間 』
7月29日 [ゲーム]『真 流行り神3』
8月4日 [マンガ]天野明『鴨乃橋ロンの禁断推理 3』
8月12日 [マンガ]河内遙『涙雨とセレナーデ 8』
9月25日 [マンガ]吉川景都「モフモフ残酷民話研究会」連載開始
10月17日 [ドラマ]『鉄神ガンライザー クロニクル』
10月20日 [マンガ]今市子百鬼夜行抄 29』
10月29日 [マンガ]月野うた「卒業するまで、君が好き」第5話
11月4日 [マンガ]天野明『鴨乃橋ロンの禁断推理 4』、近藤憲一『ダークギャザリング 8』
11月12日 [小説]村田沙耶香『変半身』
11月27日 [映画]短編映画『赫丹物語』

 

 

 

 

 

民俗学者が出てくる映画まとめ(民俗学っぽいマンガとは何か補編)

 

通俗的民俗学イメージ」に沿って創作された作品(ドラマ・漫画・ゲームなど)に登場する民俗学者たちは、妖怪を研究テーマとしている場合が多いが、実際の民俗学で妖怪を専門としている研究者は少ない。にもかかわらず、妖怪を研究したいからと民俗学を志望する学生が多く、現場の教員が頭を悩ませていることは、研究者仲間でよく話題になる。

(伊藤龍平『ネットロア ウェブ時代の「ハナシ」の伝承』青弓社、2016年、66~67頁)

 

民俗学っぽいマンガと民俗学っぽい映画

 

今回は、以下の記事の続き。

 

民俗学っぽいマンガとは何か ——民俗学者が出てくるマンガまとめ - 猫は太陽の夢を見るか:番外地

 

前回の記事を書いたとき、マンガのほかにアニメやゲーム、ドラマには触れつつも、映画についてはほとんど言及しなかった。

なぜかといえば、民俗学者キャラクターが出てくる映画がそもそも少ないというのもあるが、まずネットで映画の情報をまとめるのということ自体がいまさら感があるし、ほかに詳しいサイトやブログがいくらでもあると思ったからだった。

実際、インターネットの世界では映画について語るサイトは無数にあり、SNSは最新映画の感想であふれている。公開館数の少ない映画も昔のマイナー映画も、レビューを探そうと思えばいくらでも出てくる。

……しかし、マンガとアニメとドラマとゲームと小説についてまとめておきながら、映画だけ取り上げないというのは、やはりまとめとして不十分ではないかという思いも残っていた。

 

そしてあらためて検索をかけてみると、「民俗っぽい映画」あるいは「民俗学っぽい映画」という括りでまとめているものはネット上には意外と見当たらない。

2020年に『ミッドサマー』がヒットしたときには、「民俗カルトホラー」を強調するレビューが目立ったが(これはほぼ同時期に『シライサン』『犬鳴村』などの国内ホラー映画が話題になっていたことも関係しているかもしれない)、そういった一過性の現象をのぞくと類似のまとめはほとんどないと言っていい(……ただしこれは日本語環境の場合の話で、たとえば folk horror で検索するとその手の情報はいくらでも出てくる)

 

これは不便だ。

 

マンガと比べて、映画の中で民俗学者はどのような役割を与えられているのだろうか?

マンガの中の民俗学者はしばしば妖怪や呪いについて独自の見解を述べているが、映画ではどうなっているのだろうか?

マンガの中の民俗学者イメージと映画の中のそれとは、重なるところはあるのだろうか?

 

前回の記事からそういう疑問を抱いても、確かめるすべがない。そこで、それらの疑問を少しでも解消するため、今回、乏しい手持ちの知識リソースを頼りに、前回のマンガ記事の補足として「民俗学っぽい映画」について一回まとめておこうと思い、この記事を書くことにしたというわけだ。

 

最初に断っておくと、筆者は映画と民俗学のどちらにもまったく詳しくない。

この記事にも初歩的な事実誤認や勘違いが多々あることだろう。しかし前回の記事と同様に、今回もなるべく多くの情報をまとめることを優先し、あまり作品の内容に深入りはせず、とりあえずタイトルの列挙に重点を置いた。

 

方針としては今回も前回と同じく、「民俗学っぽい雰囲気」や「民俗学っぽい描写」の有無ではなく、

 

映画の中に民俗学者かそれに準ずるキャラクターが出てくるかどうか。

 

その一点を基準に作品を選んでまとめた。

 

今回は前回と違い、あまり全体の考察や由来探しのようなことはしていない。

まずは個人的に選んだ代表的な10作品を挙げ、次に次点の作品を並べていきたい。

 

 

 

 

 

 

なお、この記事はネタバレにはまったく配慮しない方針で書かれています。

その点、どうかご承知おきください。

 

 

 

 

 

 

 

勝手に選ぶ!民俗学者が出てくる映画10選


死国 1999年 東宝
監督 長崎俊一, 脚本 万田邦実/仙頭武則
原作 坂東眞砂子死国

 

田舎の持ち家を処分するため15年ぶりに故郷にやって来た比奈子は、幼馴染で、共に文也という少年に淡い恋心を抱き、不思議な魅力を備えていた莎代里が高校生の時に不慮の事故で亡くなっていた事を聞き、驚く。莎代里の死のショックから立ち直れないでいた文也は再会した比奈子と接近してゆく。そんな折、村の聖地にある地蔵の首がもがれるという事件が起こる。その事件をきっかけに次々と不気味な現象が起こるようになる。

死国|一般社団法人日本映画製作者連盟” http://db.eiren.org/contents/04310165801.html より引用)

 

映画『死国に出てくる民俗学者・小田信夫(演 諏訪太朗は、高知県立高岡民俗資料館に勤務する学芸員

映画前半の登場シーンでは、帽子にメガネ、ヒゲ、シャツにジャケット姿。役場に勤める文也(演 筒井道隆)とともに禁足地の洞窟に調査に入り、文也に黄泉の国について解説する。この場面で小田は文也に「地元の人のほうが詳しい」と発言しており、小田が村の外部から来た人間であることが示唆されている(この発言が表しているのは、生まれた土地で進学就職し地方公務員となった文也と、専門職の学芸員として「よそ」からやって来た小田、という二人の立ち位置の違いでもある)

東京から比奈子(演 夏川結衣)が帰ってくる一方で、文也は死んだ幼馴染の日浦莎代里(演 栗山千明)のことが気にかかっていた。文也から日浦家について何か知らないかとたずねられた小田は、以前に日浦という人物が書いた四国の古代史関係の報告があったが結局出版されなかったという話をする。そして、その古代史関係の報告をしていた人物こそが莎代里の父親である日浦康鷹(演 大杉漣だった。文也は役場の資料棚から当時の民俗学の学会誌を見つけ、そこに康鷹が執筆途中だったらしい『四国の古代史』の刊行予告があるのを発見する。

ストーリーの進行にともなって村ではさまざまな不可解な現象が相次ぐ。後日、真相を解明するために小田のいる民俗資料館を訪れた比奈子と文也。小田は二人に四国八十八か所を逆に回る「逆打ち」の儀式のことを説明し、仙頭という修験者(演 佐藤允)を紹介する。しかし、莎代里の母の手によって儀式はすでに完成しようとしていた……。

この映画での小田の役回りは、怪奇現象について解説し、霊能者を紹介することだ。

ただ、小田は比奈子たちに修験者を紹介するものの、小田自身がどこまで呪いや祟りを信じていたのかはわからない。それは修験者を紹介するのを一度は躊躇っていた描写からもうかがえる。作中では小田の論文「土佐の民族と淡路島」が掲載されている『民俗史研究』という地元の学会誌がアップで映されており、小田の仕事の一端がわかるようになっている。

この映画での民俗学者の役割は確かにオカルト的現象の解説者だ。しかし、小田は単にオカルトに傾倒した異端の学者ではなく、業界の事情に通じ、あくまで専門家の立場からわかる範囲で助言をする研究者として描かれている。

余談だが、小田役の諏訪太朗は多くの特撮やホラー、サスペンスに出演する中でドラマ『彼岸島』(2013年)でも民俗学者を演じている。別作品で複数回民俗学者役を演じている数少ない役者である。

 

 

 



八月のかりゆし 2003年 ギャガ
監督 高橋巖, 脚本 高木弓芽

 

17歳のテル(松田龍平)は、どこにでもいる普通の高校生。ただひとつ違うのは、ユタ(霊媒師)を母親に持ち、民俗学者で遊び人の父親が幼い頃に行方不明になったこと。そんなある日、母が他界する。親戚の謝花家を頼って足を踏み入れた沖縄で、テルは従妹のマレニ(末永遥)に出会う。マレニは不思議な雰囲気を持った14歳の女の子。チルおばあの指導のもと、ユタになるために修行中だが、この世のものでないものが見えてしまうため、本当はユタになりたくない。家の側にはガジュマルの樹があって、そこにキジムナー(ガジュマルの樹に住む妖精)がいるという。テルは心霊現象をまるで信じていないが、なぜかマレニとすぐに仲良しになる。〔後略〕
(”八月のかりゆし|日本の映画情報を検索 日本映画情報システム” https://www.japanese-cinema-db.jp/Details?id=1019 より引用)

 

映画『八月のかりゆし』の主人公テル(演 松田龍平)の父親、柳口タダシ(演 嶋田久作は放浪癖のある民俗学者。学者だが女遊びが激しく、家族すらその所在を知らないというかなり破滅的な人物だ。『島に生きる マレビトの存在証明』という著書があるなど研究者として実績があるらしいことはほのめかされるものの、家族を放って行方知れずになっており、研究の拠点がどこにあるのかもよくわからない。

民俗学者の父親。調査研究に没頭してろくに家に帰ってこない非常識人。そしてどうやらキジムナーやマレビトなどの「妖怪」や「異界」に関係する研究をしているらしい……。

この映画で描かれる民俗学者のイメージは、いわゆるフィクションに典型的な通俗的民俗学イメージをなぞっている。「柳口」という名字は、言うまでもなく柳田国男折口信夫をもじって命名されたものだろう。

映画本編は沖縄が舞台だが、作中では柳口は始終行方不明で、終盤で映る郵便の住所から現在は岩手県遠野市にいるらしいことが判明する。

沖縄から遠野へ。

これは、

「沖縄=マレビト=折口信夫」「遠野=遠野物語柳田国男

……という要素の組み合わせによるものと容易に連想できる。

また、映画の中ではイギリスの海軍将校バジル・ホールが著した『大琉球島航海記』という実在の著作が、柳口が沖縄に興味を持ったきっかけとして登場する。

架空の本ではなく実際に出版されている著作が明示されている。

……が、柳口本人がほとんど登場しないために、その著作から彼がどういった影響を受け、民俗学者としてどういう仕事をしていたのかなどの詳細はよくわからない。

息子のテルはろくに家に帰ってこない奔放な父親に反感を持っているが、映画の中で父子が直接対面する機会はついに訪れない。

父親が登場するのは、映画の最後の回想シーンだけだ。

だが実は、映画ではこの民俗学者の父親の登場こそが物語全体のオチになっている。

それまで散々話題に上がっていながら出てこなかった父親。その父親が映画の最後の最後になってゆらりと影のように現れ、しかも演じているのがあの嶋田久作なのだ。登場シーンがある種のサプライズ的な仕掛けになっているのである。

映画の最後のシーン。それは、まだテルの母親が生きていた頃の光景だ。

生前の妻を前にして、すべてを知っているかのように静かにたたずむ嶋田久作。夫婦の穏やかな情景を映して物語は幕を閉じる。

しかし、本編で語られる身勝手な父親のエピソードと、最後の仲睦まじいように見える夫婦の場面は、あまりかみ合っているとは思えず、少々困惑が残る。

他に、木の精霊キジムナー役が三線を引く斉藤和義だったり、元首相の村山富市が特別出演していたりと、要所要所のサプライズ配役がこの映画の印象をよくわからないものにしている。

 

 

 



単騎、千里を走る。 2005年 東宝
監督 張芸謀/降旗康男, 脚本 鄒静之

 

 ある日、漁師の高田(高倉健)は、東京で民俗学を研究している息子・健一(中井貴一)が病で倒れたと聞き、上京することになる。しかし長年の確執もあり、見舞った高田に対して息子は会おうとしない。息子の命がもう長くないことを知り、やり切れぬ想いを抱く高田。そんな高田に健一の妻・理恵(寺島しのぶ)が、高田の心情を汲み、研究家としての健一の仕事振りを紹介したテレビ番組のビデオテープをそっと渡す。そこには、健一が中国の奥地・李村の民俗舞踊を研究・紹介する姿が映し出されていた。〔後略〕
(”単騎、千里を走る。 - 映画・映像|東宝WEB SITE” https://www.toho.co.jp/movie/lineup/tanki/story.html より引用)

 

映画『単騎、千里を走る。もまた父と息子の関係を描いた作品だ。高田(演 高倉健)の息子、健一(演 中井貴一は、東京大学東方芸術研究所に所属する研究者。中国の仮面文化を研究しており、十数編の論文がある。長年に渡って雲南省の仮面劇を現地で調査、記録していた。映画の中では病室のカーテン越しにベッドで寝ている様子が少し映るものの、直接的な登場シーンはない(なお、東宝のホームページにある作品紹介では「東京で民俗学を研究している息子・健一」とあるが*1、映画の中では、健一の専門が「民俗学」だとは明言されていない)。病床の身だったが、父親が中国へ行っている間に死亡してしまう。

この映画は父親が息子の旅路をたどる物語であり、いわば作中の民俗学者のフィールドワークを、見る側が追体験する物語でもある。かつての旅路の過程をじっくり描いているところこそがこの映画の見どころとなっている。

高倉健演じる無口で不器用な父親は多くを語らない。しかも、現地の住民とは通訳を介してしか話せないために、コミュニケーション全般がなかなか円滑に進まない。

空と大地だけが広がる景色。風が画面越しに伝わってくるような圧倒的リアル感。

映画は人と人との交流の大切さを、ゆっくりと丁寧に描いている。

……だがその一方で、ガイドもほとんど足を踏み入れないような中国の秘境へ調査に行くという描写が、はたして現実の日本の民俗学者と比較してどれくらい妥当なのか……などと詮索し始めると急に現実味が揺らぐような気がしてくる。映画で描かれる「秘境の村にフィールドワークに行く」という設定が、そもそもフィクションにおけるステレオタイプ民俗学者のイメージそのものだからだ。

また、健一は中国での調査生活が長く、父親との確執も放置したままだったらしい。つまり研究者として優秀な反面、あまり家庭を顧みるタイプではなかったということで、これもステレオタイプな学者イメージを踏襲していると言えるだろう。

 

 

 



奇談 2005年 ザナドゥ
監督 脚本 小松隆志
原作 諸星大二郎「生命の木」

 

1972年。民俗学を専攻している大学院生・佐伯里美(藤澤恵麻)は最近、巨大な穴と幼い少年が現れる奇妙な夢を見るようになっていた。小学一年生の夏休み、東北の隠れキリシタンの里として知られる渡戸村に住む親戚の家に預けられていた里美は、一緒に遊んでいた少年と共に神隠しに遭い、その前後の記憶がなかった。当時の記憶の断片にも思えるその不思議な夢に誘われるように、幼い頃の失われた記憶を求めて、里美は渡戸村へと向かった。〔中略〕村の教会に立ち寄った里美は、村に伝わる聖書異伝『世界開始の科の御伝え』を調べるためにやってきていた考古学者・稗田礼二郎阿部寛)に出会う。〔後略〕
(”奇談 キダン|日本の映画情報を検索 日本映画情報システム” https://www.japanese-cinema-db.jp/Details?id=1352 より引用)

 

映画『奇談』は、民俗学の大学院生・佐伯里美(演 藤澤恵麻が主人公。

幼少時の欠落した夏の記憶と不思議な夢に悩まされていた佐伯は、友人に相談したり当時の記録を調べたりする過程で専門家に意見を求めようと試みる。

そして、この映画で佐伯が最初にたずねるのは、順番から言えば、民俗学者でも考古学者でもなく、心理学者なのだ。

佐伯を出迎えるのは、臨床心理学が専門の芹沢義満(演 堀内正美)。相談に訪れた佐伯に対し、芹沢は「自己防衛本能が働いたのか、あなた自身もその夏のことに蓋をして忘れたつもりだった」と分析する。芹沢は「人生には思い出さないほうがいいこともあるんですよ……」と意味深に忠告するが、佐伯は真実を探ろうと動き出す。

次に登場する三戸部孝蔵(演 土屋嘉男)は、佐伯も所属する文芸学部民俗学研究室の教授。スーツに白衣を着た中年の男性で、デスクでお茶を啜る姿はいかにも学者然としている。

佐伯から相談を受けた三戸部は、作中時系列で十年前──つまり昭和三十七年頃に渡戸村へフィールドワークに行ったことがあると打ち明ける。三戸部によれば、渡戸村には「はなれ」という謎の集落があるのだという。

「それと、できれば「はなれ」がいまどうなっているか見てきてほしいんだ。ダムに沈んでしまう前にね」

「村は「はなれ」のことを隠したがってる」

三戸部から「はなれ」の現状を確認してきてほしいと頼まれた佐伯は、単身、渡戸村へと向かう。

村への道中までの佐伯は三戸部の論文を読み込み、現地の役場の職員に事情を聴くなど研究者らしい感じで描かれるのだが、村に到着してからは一転、時折村の石仏などを写真に収めているのを除くと、研究者としての佐伯の姿は薄くなってしまう。以降、物語の主体は阿部寛演じる考古学者・稗田礼二郎のほうに移っていく。

稗田礼二郎。短髪に黒縁眼鏡、黒スーツを着た長身の男性。「地球には我々の生態系とは別の進化を遂げた闇の生態系があり妖怪は実在する」という学説を発表し学会を追放された異端の考古学者(……と、稗田は自嘲気味に自己紹介するが、初対面の佐伯が「あの『ヒルコの里』の稗田礼二郎先生ですか?」とたずねる程度には名の知れた人物であるらしい)。職業としては考古学者だが、渡戸村を訪れたのは在野の民俗学者の著作の中に村に関する記述を見つけたためだという。また、教会の神父→村の古老→寺の住職などの現地の人々に話を聞き、山を歩いて調査をするなど、その行動も考古学者というよりも民俗学者的に描かれている。

村の教会で、稗田は村の隠蔽体質を告発する。

「なぜか渡戸村ではこのことを外にもらさないようにずっと監視の目を光らせてきたようですね」

「この本は限定五十部の自費出版だったから、「世界開始の科の御伝え」と「はなれ」のことが記載されてしまった。このことを調べに来たんですよ」

ここで思い出してほしいのは、佐伯の指導教員の三戸部教授のことだ。稗田礼二郎は過去の民俗学者の著作からようやく「はなれ」の存在にたどり着いたと語った。しかし、途中で頓挫したとはいえ、稗田に先駆けて十年も前に自力で「はなれ」を調査し論文を書き上げていた三戸部も、だいぶ異端の学者の領域に片足を踏み入れているんじゃないだろうか……。

では、民俗学の研究者である三戸部や研究室の他の院生たちは普段何の研究をしているのか。

その内容は具体的にははっきりしないが、映画では、三戸部や佐伯含む他の研究室のメンバーは全員白衣を着用して作業をしていた。院生たちは何かの古文書らしき書物をタイプライターで文字起こししていたり、ヘッドホンを着けて録音した音声をテープ起こしをしている様子が描写される。研究室には古そうな資料や木彫りの仏像や壺などが積まれており、院生たちはその中で黙々と作業をしていた。

またよく見ると背景の研究室の黒板に、

「十一月十六日(木) 十三時~大講堂にて「東北地方の風俗と宗教」森下教授講演会」

「十六時~ 早川教授 A教室にてゼミ(試写会)」

「課題提出期限 十二月一日」

「隠居の居住制の考察」

……といったが書き込みがあり、作中時間が昭和四十七年の十一月頃だとわかるとともに、研究室の活動がわずかだが垣間見える。

『奇談』はとにかく学者が多く登場する映画である。映画のラストでは三人の「じゅあん」たちが人々を導き昇天する。映画に登場する心理学者・民俗学者・考古学者の三人の学者たちも、悩みを抱える佐伯にそれぞれの場面でそれぞれにふさわしい助言を授けることで、この物語を導いているのだ。

 

 

 



エクスクロス 魔境伝説 2007年 東映
監督 深作健太, 脚本 大石哲也
原作 上甲宣之「そのケータイはXXで」

 

大学のサークル仲間の水野しより(松下奈緒)と火請愛子(鈴木亜美)は、人里離れた温泉地の阿鹿里村を訪れた。それは、恋人の朝宮圭一(池内博之)の浮気現場を目撃したしおりの傷心旅行だった。しきりに携帯電話へ連絡して復縁を迫る圭一だが、しおりは無視を決め込んでいた。到着した阿鹿里村には、奇妙な村人ばかりがいた。不安になるしおりに追い討ちをかけるように、宿の押入れで見つけた携帯電話からは「今すぐ逃げろ! 足を切り落とされるぞ!!」との警告が聞こえてくる。そのアドバイスは、妹の静を阿鹿里村で失った物部昭と名乗る男からのものだった。村人たちの怪しい気配を感じたしおりは、物部の指示に従って宿から逃走する。同じ頃、愛子もゴスロリ・ファションの謎の女レイカ小沢真珠)から襲われていた。〔後略〕
(”XX エクスクロス 魔境伝説|日本の映画情報を検索 日本映画情報システム” https://www.japanese-cinema-db.jp/Details?id=20600 より引用)

 

映画『エクスクロス 魔境伝説』に登場する物部昭 (演 岩尾望, 声 小山力也は、城南大学に勤務する民俗学の講師。一般には秘匿されているはずの阿鹿里村の地理や風習について詳しい知識を持つ。連れ去られた妹・静を助けるために連絡を取ろうとしていたが、しより(松下奈緒)が静の携帯電話を拾ったことで彼女に村から逃げるようにアドバイスをすることになる。

「早くそこから逃げろ! 足を切り落とされるぞ!」

「きみが俺の話を信じるか、奴らに足を切られるか、選択は二つに一つだ」

本編中、阿鹿里村に関する情報はほぼすべて物部の口から語られる。

「もともと阿鹿里は木こりたちの村だった。男たちが山から山へ木を切りに出かけている間、女房が村から逃げ出したりしないよう、男たちは女たちの左足を切った。それがひどい風習の始まりだった」

「時が経つと村人は旅の女を捕まえて山へ捧げる生き神として祀るようになった。生き神にされた女たちは左足を切られて、山の祠に閉じ込められた。そしてその風習は今も密かに続いている」

「村人はみんな足を引きずっていただろう。奴らは子供が生まれるとすぐ、左足の腱を切るんだ。仲間の証、延いては村から逃さないために……」

「信じたくない気持ちはわかる。だがきみも見てきたはずだ。村のあちこちに飾られた案山子たちを。あれは飾りなんかじゃない、死んだ女たちをミイラにして村の守り神として祀ってるんだ!」

「気をつけろ! 儀式はもう始まっている!」

物部の台詞はどれも切迫感に満ちている。

ただし、物部自身がどのようにして阿鹿里村の詳細を知ったのかということや、具体的に民俗学の何を専門としているのかということは明かされない。

途中、大学の教員の中に物部の名前が見つからなかったという理由で、物部はその正体を疑われるが、のちにそれが物部が常勤の教員ではなく講師だったためと明らかになる。素性のよくわからない相手。先の見えない暗闇の中の逃走劇。物部との会話が携帯電話越しにのみ交わされるなどの演出も含め、人を最後まで信じることが出来るかということが、この映画の重要なテーマになっている。

終盤まで電話越しの声のみでなかなか姿を見せない物部だが、しよりたちが危機に瀕している場面で颯爽と車を運転して登場。派手なカーアクションで村の儀式に突っ込んでくるクライマックスはこの映画最大の見どころ。車での登場後も物部は黒いキャップを目深にかぶり、ラストギリギリまで素顔が明かされないが、それも意味のある演出のひとつとなっている。

 

 

 



のぞきめ 2016年 KADOKAWA/プレシディオ
監督 三木康一郎, 脚本 鈴木謙一
原作 三津田信三「のぞきめ」

 

ADとしてテレビ局で働く三嶋彩乃(板野友美)は、腹がよじれ、口から泥を吐き出した異様な死に様の青年の怪死事件を取材する。青年の恋人は「“のぞきめ”の仕業だ!」と狂ったように顔を歪める。彼らは大学のサークルで山奥の合宿に行って以来、ずっと何かに“覗かれている”気がしていたのだ。そして関係者も次々と“のぞきめ”の悲劇に見舞われ、その恐怖はついに彩乃の身にも降りかかる……。
(”のぞきめ|日本の映画情報を検索 日本映画情報システム” https://www.japanese-cinema-db.jp/Details?id=46647 より引用)

 

映画『のぞきめ』に登場する四十澤想一(演 吉田鋼太郎,玉城裕規(過去))は、在野の民俗学者だ。著書『山村の民間伝承』の「『六部殺し』から見る村落共同体の規範と差別意識」の章の中に「梳裂山地の侶磊村には〈のぞきめ〉と呼ばれる化け物の伝承がある」という記述を残していた。その記述を頼りに自宅を訪ねてきた三嶋彩乃(演 板野友美)と津田信二(演 白石隼也)に「のぞきめ」について五十年前の自身の体験を語る。

回想に出てくる若い頃の四十澤は、登山者ふうの帽子をかぶり大きなリュックサックを背負っている。さらに首からカメラを下げ、尻ポケットには手帳を突っ込み、シャツに上着を着込んだ重装備の旅人スタイルだ。フィールドワークのために村を訪れ、出くわした村人に突然、「この村にのぞきめという化け物が出ると聞いてやって来ました」と言うなど、やや言動に不用意なところがある若者として描かれている。

「のぞきめにとり憑かれた者は、まず誰かに見られているという錯覚にとらわれる」

「そのうち、四六時中不気味な目に覗かれるようになる。襖や障子の隙間、天井の隅、道の角、藪の中、いたるところから……」

「覗くだけだよ。妖怪や幽霊の類は、姿を見せるだけで意味がある」

「人々に恐怖心を植え付けて、むやみな森林伐採を防ぐためだ」

「侶磊のように林業を唯一の生業とする集落には、よくある、お伽話だよ」

現在の四十澤は沿岸部の邸宅で隠居のような生活をしている。家の中には大きな絵画が飾られ、家事のために人を雇っているなど、かなり裕福な生活をしているようだ。つねにサングラスをつけ、ストールをまとい、ステッキを手放さない。

当初はのぞきめのことをあくまで「お伽話」と語った四十澤だったが、しかし実は、のぞきめの祟りから逃れるためにそのサングラスの下は両目とも黒く潰され、盲目となっているのだった。

「のぞきめは実在する。あれは大昔、あの場所で無残に殺された六部の少女の怨霊だ」

「あれと目を合わせれば呪われる。ならば、視界を失ってしまえばいい。そう考えたんだが、一度覗かれれば、のぞきめの恐怖から逃れることはできない。目が見えなくても、それは同じことだ……」

とにかく、吉田鋼太郎の怪演が光ってあまりある。他の映画の民俗学者キャラクターと比べても、「こんな学者がいてたまるか」という胡散臭さのレベルでは群を抜いているだろう。

とくに映画の中で四十澤が映る最後の場面。彩乃を見送ったのち部屋に戻ろうとする四十澤の前に再びのぞきめの少女が現れるのだが、盲目のはずの四十澤はのぞきめと対峙し、ひとり不気味な笑みを浮かべるのだ。その笑みの不気味さだけでも、「民俗学者」=「あやしくて胡散臭い」というイメージを与えるには十分な印象を残している。

 

 

 


貞子vs伽椰子 2016年 KADOKAWA
監督 脚本 白石晃士

 

ある冬の日、リサイクルショップで軽い気持ちで手にしたビデオデッキを再生した女子大生・有里(山本美月)と親友・夏美(佐津川愛美)。そこには、観るもおぞましい映像があった。携帯電話に気を取られ、ろくに目にしていなかった有里。一方、映像を観てしまった夏美はその時から奇妙な現象に襲われるようになる。そんな中、夏美を救うため有里は「呪いの動画」を追いかけている大学の教授・森繁(甲本雅裕)から紹介された霊媒師・常盤(安藤政信)に相談する。〔中略〕一方、数日前に家族で引っ越してきたばかりの女子高生・鈴香(玉城ティナ)は、向いの空き家が気になっていた。入ったら行方不明になるという噂のある家。無人のはずなのに、時折、何かの気配がする。近所の少年・祐太の失踪事件が起きた頃、鈴花は、向かいの家に祐太の後姿を見つけ、家に足を踏み入れてしまったのを機に、彼女の身と家族に不可解な出来事が起き始める。〔後略〕
(”貞子vs伽椰子|一般社団法人日本映画製作者連盟” http://db.eiren.org/contents/04010265701.html より引用)

 

映画『貞子vs伽椰子』森繁新一(演 甲本雅裕は、都市伝説の研究者。成安文化大学文化人類学部の教授。無精髭にパーマの男性で、大学では白シャツにサスペンダーを着けた姿をしている。研究室には「物理現象としての心霊 オックスリー実験の真偽を巡って」や「依代とは何か」などと書かれたポスターが張られているほか、木彫りの仮面や神棚らしきものまで並んでいる。民俗学というより超心理学寄りのイメージが強調されている人物である。しかし、講義のスクリーンには「民俗学・説話伝承史資料」というキャプションが表示されており、少なくとも民俗学が専門なことは確かなようだ。

かなりのオカルトマニアで、貞子に憧れて本物の呪いのビデオを探していることを講義でも公言していた。その貞子へ向けられた愛は強く、『「呪いのビデオ」を追う』という本を自費で出版するほど。

「呪いのビデオ」の呪いを回避するために霊能者を紹介し、自身も除霊に参加するが、儀式の最中、霊にとり憑かれた霊能者と相打ちになって死亡する。

最期の言葉は、「待ってくれー! まだ……まだ、貞子を見てなああぁい……!」

森繁教授の特徴的なところは、都市伝説の説明や呪いのビデオに対抗する方法として「ミーム」や「メンタルウイルス」を例に挙げて語っている点だ。

講義中の森繫教授の台詞をいくつか抜き出してみる。

「ちょっと代表的な都市伝説を挙げてみようか。口裂け女トイレの花子さん。赤マント。ベッドの男。足を踏み入れたら死ぬ家。呪いのビデオ。どの都市伝説も皆聞いたことがあるだろう」

「じゃあね、これらを体験した本人から聞いたことがある人。……いないよね。どうして。それは、作り話だから。昔話と同じ、人から人への伝達で形成される、ミームと言われる文化遺伝子なんだよ」

「ただしね、この呪いのビデオ。これだけは他と違う。僕の心をつかんで離さない」

この、映画冒頭で大学教授が身近な都市伝説を例に、それらが作り話だと学生たちに講義するという始まり方は、『キャンディマン』(1992年)『ルール』(1998年)などの都市伝説を題材とする先行作品とまったく同じ展開だ。都市伝説なんて作り話だと語った大学教授がその後、都市伝説にかかわって死亡するところも共通している。

「確かに君たちの話は、呪いのビデオの都市伝説に当てはまる。もしこれが本物だとしたら、ものすごい発見だ」

「おそらく、この都市伝説に触れた者たちのミームがマインドウイルスと化し、集合無意識の具現化が起きたんだ」

「僕の考えでは、死ぬ直前なら我々の内部プログラムのミームを書き換えれば……」

この映画の中で森繁教授が語る「都市伝説=ミーム」論は、フィクションに出てくる民俗学のイメージとはあまり重ならないようにも思える。映画に登場する民俗学者ならば、もっと古い伝承とか隠された秘境の村とかについて語ったほうがいいんじゃないか……などとつい思ってしまうが、ちょっと調べてみると、インターネット・ミームの研究というのは、現実の民俗学──とくにアメリ民俗学ではすでに蓄積のある研究対象であるらしい*2 *3。最近も『フォークロアソーシャルメディア』という論集が刊行されたばかりだ。

とすると、都市伝説がミームとなって拡散するという話は、都市伝説の専門家である民俗学者・森繁教授の口から出る説明としては(もちろん「集合無意識」などの論理に創作内の飛躍はあるものの)、結果的にそれほど違和感のある言葉ではない……のかもしれない?

 

 

 

 


DESTINY 鎌倉ものがたり 2017年 東宝
監督 脚本 山崎貴
原作 西岸良平鎌倉ものがたり

 

鎌倉。ここには、人間ばかりでなく、幽霊や物の怪、魔物に妖怪、神様、仏様、死神、貧乏神までが住んでいた。魔界や黄泉の国の間で、生者と死者の思いが交錯する都。この地に暮らすミステリー作家、一色正和(堺雅人)の元に、若い女性、亜紀子(高畑充希)が嫁いでくる。しかし、亜紀子は、あちこちに人ならざる者がいるような、おかしな気配を感じていた。正和と亜紀子が道を歩いていると、その前を何かが通り過ぎる。それは、ムジナか河童か……? 驚く亜紀子に正和は、“鎌倉は何千年も昔から妖気が溜りに溜まっていろいろな怪奇現象が起こるけれどもここでは普通のこと、すぐに慣れる”と言うのだが……。〔後略〕
(”DESTINY 鎌倉ものがたり|日本の映画情報を検索 日本映画情報システム” https://www.japanese-cinema-db.jp/Details?id=47194 より引用)

 

映画『DESTINY 鎌倉ものがたりでは、主人公の小説家・一色正和(演 堺雅人)の父親である一色宏太郎(演 三浦友和は、民俗学者の大学教授だ。

息子の正和は幼い頃、父親が調査研究で不在の際に母親が小説家の甲滝五四朗と密会しているのを目撃し、以降、母親が甲滝と不倫をしていたのだと思い込んでしまう。

しかし、甲滝五四朗の正体は宏太郎本人だった。

宏太郎は父親(正和の祖父)からの「学者になれ」という圧力に対抗できずに研究者となったものの、夢を諦めきれず隠れて幻想小説家・甲滝五四朗として活動していたのだ。ペンネーム「甲滝五四朗(こうたきいつしろう)」は本名「一色宏太郎(いつしきこうたろう)」のアナグラム。小説家となるときはメガネを外しつけヒゲに和服で変装し(普段はメガネと背広)、自宅近所の別宅で執筆をしていた。正和の母親は執筆作業に励む夫に会いに行っていただけだったのだ。

しかし宏太郎が事実を隠したまま他界したため、以降、正和は夫婦関係というものに複雑な思いを抱えていくことになる。

映画前半では正和の抱えるわだかまりが夫婦喧嘩の原因となっている。

のち、妻を救うため黄泉の国を訪れた正和は父親と再会、真相を明かされる。実は、宏太郎の死も、早世した妻を呼び戻そうとして幽体離脱し、そのまま現世に帰ることができなくなってしまった……という事情があったのだった。

映画では原作のさまざまなエピソードが組み合わされているが、自分の両親を誤解していた正和がその秘密を知り夫婦のあり方を考え直すまでがストーリーの主軸となっている。

また、一色家の納戸には正和の趣味の鉄道模型が保管されているが、他に民俗学者だった祖父と父が収集した骨董品類も多く収められている。人魚のミイラらしきものや鬼退治を描いた画軸(この絵の中で鬼を退治しているのがおそらく正和の前世の姿)、アフリカ系っぽい置物などが確認できる。

収集品以外に宏太郎が民俗学者として具体的に何をしていたのかは描かれないが(というか学者の仕事は渋々やっていた感じすらある)、映画に多数登場する妖怪たちとともに、ここでは民俗学者とオカルト趣味のイメージが強く結びつけられている。

また、宏太郎が小説家業のカモフラージュに民俗学者としての調査研究を口実としていた描写は、「民俗学者はフィールドワークで数日くらい家を空けていてもおかしくない」というイメージをもはや自明のものとしてストーリーに組み込むことで成立しているものでもある。

 

 

 

 


劇場版 屍囚獄 起ノ篇 / 劇場版 屍囚獄 結ノ篇 2017年 「劇場版 屍囚獄」製作委員会
監督 脚本 城定秀夫
原作 室井まさね「屍囚獄」

 

山奥の県境付近に位置する、人口わずか43人の八坂村。この廃村寸前の小さな集落へと通じる、唯一の道を走る一台のワゴン車。比良坂大学の教授・葦原とその助手・香坂、そして美琴たち4人の女子大生は、ゼミ合宿のためにこの村を訪れていた。到着するなり、美琴たちは村長の天野や村の男たちから熱烈な歓迎を受けるが、この一帯にはびこる違和感に不安を覚えていた。そう、この村には女が全くいなかったのだ。葦原の真の目的は、この閉鎖的な村に起こっている現象を調査することだった。そして、村の協力を得る条件は、若い女性を連れて行くというものだった…。
(”屍囚獄(ししゅうごく)- アルバトロスフィルム” https://www.albatros-film.com/movie/corpse-prison/ より引用)

 

映画『劇場版 屍囚獄 起ノ篇 / 結ノ篇』葦原(演 稲葉凌一)は、比良坂大学の民俗学教授。原作コミックではハンチング帽とメガネにポロシャツ姿の男性だが、映画ではメガネと帽子はなく、口元とあごにヒゲをたくわえ、服装は黒のネックウォーマーにジャケットという姿になっていた(ただし夜間に書き物をしているときはメガネをしている。また、フィールドワーク時はジャンパーを着ていた)

映画は、葦原がゼミの女子学生たちを連れて山奥の八坂村を訪れる場面から始まる。

八坂村は今まで外部からの調査を一切断ってきたというが、葦原は村長の天野と事前に交渉し、「若い女性を連れていくこと」を条件に村の調査を認められていた。

映画前半では、熱心に村の風習を記録する葦原の姿が描かれる。葦原は村の儀式「足切りの儀」に女子学生たちを参加させ、自身はそれをビデオカメラで撮影(ここのシーンだけ画面が葦原のカメラ視点のドキュメンタリー風になる)、外部の女性を村の嫁とする歓迎の儀式だという村長の説明を聞いて「異界婚姻譚だ」と解釈する。

しかし、この葦原教授、実は助手の香坂(演 福咲れん)と不倫関係にあることが早々に明らかになる。ほかにも村の神社の本殿に無断で侵入し古文書を持ち出すなど、原作と比べても倫理観に欠ける行動が目立つ。

また、持ち帰った書物を読み解いていた葦原は、八坂村の隠された恐ろしい風習を知ってしまう。八坂村では古くより村の外から来た女性を捕らえては足を切った上で逃げられないようにし、監禁して無理やり子供を産ませてきたというのだ。その事実を学生に説明しているところを村長に聞かれてしまい、危機を悟った葦原は学生たちを逃がそうと村長と揉み合いになる。葦原の意を汲んだ香坂が他の学生を連れて逃げ出そうとするところで前編(起ノ篇)は終了。

後編(結ノ篇)では、学生たちを逃がそうとした葦原が村長に捕まり縛られているシーンから始まる。村長に痛めつけられた様子の葦原は、村長に対し自らの信念を熱く語る。

「私は神など信じていない。だからこそ民俗学に興味を持った」

「人の心にある神とは何なのか、それを知りたかった」

「神がこの村を作ったんじゃない、この村が神を作りだしたんだ……穢れた神を」

「あなたが呪いを断ちきらなければならない」

しかし、激昂した村長に猟銃で撃ち殺される。死体は物置小屋に放置された。

女子学生を騙して村に連れてくる、無断で神社から古文書を持ち去る、妻子のある身でありながら教え子と不倫をしている……など、死亡フラグは十分に揃えているので、ホラー映画の登場人物としては順当な死という印象(ついでに言うと、この映画の世界では神は実在するので葦原が最期に熱弁した信念はあっけなく裏切られることになる)

なお、原作の葦原教授は、学生を誤って車で跳ねた上に証拠隠滅を図り逃亡しようとしたところを村人に発見され殺されている。対して映画版では、自ら学生の身代わりとなり決め台詞のような言葉まで残して死んでおり、キャラ的な見せ場は原作よりも増えている。

女性の足を切り落として村から出られないようにするという設定は「エクスクロス 魔境伝説」(2007年)でもあったが、「エクスクロス」が全90分程度だったのに対し、こちらは前後編合わせて2時間半近い尺がある。にもかかわらず民俗的背景を解説する描写は大きく省かれており、全体的に設定を持て余している感は否めない。難点の目立ついわゆる低予算映画ながら、因習に満ちた最悪の村がまるごと炎に焼かれるラストシーンはそれなりに迫力がある。

 

 

 


10
来る 2018年 東宝
監督 中島哲也, 脚本 中島哲也/岩井秀人/門間宣裕
原作 澤村伊智「ぼぎわんが、来る」

 

香奈(黒木華)との結婚式を終え、幸せな新婚生活を送る田原秀樹(妻夫木聡)〔中略〕 イクメンパパとして〔娘の〕知紗を溺愛する秀樹の周囲で、超常現象としか言いようのない怪異な出来事が相次いで起こり始める。何かに狙われているのではないかと恐れた秀樹は、オカルトライターの野崎(岡田准一)と、霊媒師の血をひくキャバ嬢・真琴(小松菜奈)とともに調査を開始。〔中略〕民族学者・津田(青木崇高)によると、その“何か”とは、田原家の故郷の民族伝承に由来する化け物ではないかという。そんななか、真琴の姉で、国内最強の霊媒師・琴子(松たか子)の呼びかけで、全国から猛者たちが次々と田原家に集結。かつてない規模の“祓いの儀式”が始まろうとしていた……。
(”来る|日本の映画情報を検索 日本映画情報システム” https://www.japanese-cinema-db.jp/Details?id=47572 より引用)

 

映画『来る』に登場する民俗学者・津田大吾(演 青木崇高は、慶成大学人文学部の若き准教授(原作では御茶の水のS大学)。田原秀樹(演 妻夫木聡)の旧友であり、初登場の結婚式のパーティーのシーンでは、秀樹から高校時代からの大親友と紹介されていた。服装は基本的にラフでシャツにハーフパンツ、パーマに無精髭。メガネはかけているときとかけていないときがある。軽めのファッションに合わせるかのように、関西弁で軽快に話す。

不可解な現象に悩まされている秀樹から化け物の対処法を聞かれるが、「目玉のオヤジかゲゲゲの鬼太郎にでも頼め」と言い返す。一応は妖怪「元興寺」の話を紹介し、人は都合の悪いことをみんな妖怪のせいにしてきたのだという話をするも、「民俗学者の発言としては不適切だ」とも言い加えている。

化け物の対処法を探している秀樹にライターの野崎(演 岡田准一)を紹介するなど、映画前半の津田は、秀樹に対し一見して親身で友好的な態度で接しているように見える。が、実は同時に秀樹の妻の香奈(演 黒木華)とは不倫関係にあったことが後半で暴かれる。魔除けと称し田原家の仏壇に「伏峰大社守護」と書かれた札を置いていたが、それも普通の札に細工をした魔導府で、逆に部屋に魔を呼び込むように仕向けるためのもの。すべての災厄は、津田によって仕組まれたことだったのだ。

秀樹の死後、研究室を訪ねてきたライターの野崎に、「実は秀樹の大切なものを奪うのが趣味だった」と異常な執心にとらわれた本性を明かす。

しかし、そのときすでに津田本人も化け物の呪いに蝕まれており、香奈との不倫の最中にも背中に複数の大きな爪痕のような傷が浮かび上がっていた。十二月二十四日、クリスマスイブの朝のニュースで大学の研究室で変死していたことが報じられる。死因は不明とされたが、遺体には複数の傷が残っていたという。享年三十四歳。死後もなお電話とテレビを介してあの世から語りかけてくる執着心の深さは、まさに狂気の域に達していると言えよう。

研究者としての津田は、都内の私大に広い個人研究室を持つなど、職場の環境は悪くなかったようだ。研究室には多くの蔵書とともに南方系のものらしき置物などが所狭しと並べられていた。

が、登場シーンの多さに比して、津田本人が民俗学の中で何を専門としていたのかは最後まで明らかにならない。原作と比べても、映画では民俗学的な専門知識を語る部分は省かれており、学者というよりも異様で不気味な男という印象が強い。

事件に巻き込まれて死ぬという点では、他のホラー映画の民俗学者キャラクターとも共通しているが、民俗学者自身が黒幕となるパターンは映画では他に例を見ない。たとえば、不倫の末に死亡する民俗学者という意味では『屍囚獄』の葦原と同じだが、序盤で自ら語っていた研究者の矜持をかなぐり捨てオカルトに走る姿は葦原とは正反対である。そういった意味で、映画の民俗学者キャラクターの描かれ方としては斬新なイメージを提示していると言えるかもしれない。

 

 

 

 

 

さて、ここで少し前回の記事を振り返ってみたい。

前回の記事ではマンガ作品に登場する民俗学キャラクターを分類・紹介するために、便宜的に作品をいくつかの要素に分けて並べた。

 

民俗学者は旅先で怪奇に遭遇する」

民俗学者はオカルティスト」

民俗学者は家にいない」

民俗学者は陰惨に死ぬ」

「少年少女は民俗学を学びたい」

「先生は民俗学に詳しい」

民俗学者はモデルになる」……。

 

これらの要素はここで挙げた映画の多くにも当てはまる。

 

死国の小田信夫は、霊能者を紹介するオカルトの仲介者とも言える存在。

『八月のかりゆし』の柳口タダシは、柳田国男折口信夫の要素を合わせ持ち家にほとんど帰らない奔放な父親。

単騎、千里を走る。の高田健一は、中国奥地の現地調査のために家庭の事情を放置し父親との確執を深めた。

『奇談』の佐伯里美と三戸部孝蔵、そして稗田礼二郎は、旅先で怪奇に遭遇する学者のお手本のような役回り。

『エクスクロス 魔境伝説』の物部昭は、旅先での陰惨な死を回避するために奮闘する。

『のぞきめ』の四十澤想一は、旅先で遭遇した呪いをその身に受けるオカルティスト。

『貞子vs伽椰子』の森繁新一は、貞子を愛してやまないオカルトフリークで最後は除霊に失敗して死ぬ。

DESTINY 鎌倉ものがたりの一色宏太郎は、幽体離脱に失敗して死去したオカルトの実践者。

『劇場版 屍囚獄 起ノ篇 / 結ノ篇』の葦原は、旅先で村人に襲われ陰惨に死ぬ。

『来る』の津田大吾は、自ら呼び込んだ呪いによって身を滅ぼしたオカルティスト。

 

どうだろうか。映画に出てくる民俗学者たちの多くは旅先で怪奇的事件に遭遇し、オカルトを信じ、家を空けがちで、最期は陰惨に死ぬ。

おおむね、そういう傾向が浮かび上がってくる。

これは偶然だろうか?

 

 

もちろん偶然である。

 

 

このような恣意的な要素の抽出にあまり意味があるとは思えない。

いくらなんでもサンプルが少なすぎるし、これらの要素が民俗学者キャラクター特有のものなのかどうかもわからない。映画の中で事件が起これば、少なくない作品で非現実的で超自然的な現象が絡み、だいたいの登場人物たちは何かしら家庭に問題を抱えており、そして多くの場合、最終的に誰かが死ぬのだ。それは、別に民俗学者に限った特徴ではない。

……でも、本音を言うと、せっかくここまで書いてきたので、多少は意味があるとも思いたい。

しかし雑な考察を述べるよりも、もとよりこの記事の本旨は情報をまとめることにある。

上に挙げた10作品はあくまで代表例だ。

民俗学者が出てくる民俗学っぽい映画は、ほかにもあるのである。

 

 

 

(まだまだある! 民俗学者が出てくる映画)

帝都物語 1988年 東宝
監督 実相寺昭雄, 脚本 林海象
原作 荒俣宏帝都物語

映画『帝都物語には、実在の学者や著名人がたくさん登場するが、そのなかで、考現学者で民俗学者今和次郎(演 いとうせいこうが出ている。原作小説では東京市中での今和次郎加藤保憲との魔術的追走劇が描かれ、柳田国男に言及する箇所もあるが(「大震災篇」)、映画での登場は和次郎が銀座で考現学採集のスケッチをしているシーンのみにとどまっている(このスケッチは絵コンテを担当した樋口真嗣が手がけたものとのこと*4

 


立喰師列伝 2006年  Production I.G
監督 脚本 押井守
原作 押井守立喰師列伝

映画『立喰師列伝は、この映画自体が架空の民俗学者・犬飼喜一の架空の著書『不連続線上の系譜』の記述に基づくという設定だ。しかし、と言いながらも、映画本編に犬飼本人はほぼ登場しない。映画の中での犬飼の扱いは、「自称民俗学者」「無銭で蕎麦食い」「自称民俗学者袋叩き」「「食」に関する行き違い」などの新聞記事の断片でしかわからない。しかしこの映画本編すべてが民俗学者・犬飼喜一の著書の映像化というふうに捉えると、この映画は「民俗学っぽい映画」どころかひとりの民俗学者の研究そのものを表した映画とも言えるかもしれない。……が、それはもちろん詭弁で、実質的には監督で原作者の押井守の長い長い自分語りを代弁する映画である。作品の設定は突飛ながら、オカルト的民俗学描写に陥らず、ありそうでなさそうな、いやないだろうという絶妙なリアリティラインで民俗学を描いた怪作だ。

 


河童のクゥと夏休み 2007年 シンエイ動画
監督 脚本 原恵一
原作 木暮正夫「かっぱ大さわぎ」「かっぱびっくり旅」

映画『河童のクゥと夏休みに登場する民俗学者・清水スミオ(声 羽佐間道夫は、復活した河童の子供クゥの父親を斬り殺した武士の子孫。清水の家には先祖が残した「河童の腕」が河童懲罰譚とともに家宝として伝わっており、それを根拠に河童は実在したという説を唱え続けてきた。清水はテレビ番組に出演してクゥらと直接対面するが、持参した河童の腕をクゥに奪われてしまい、この出来事をきっかけに物語は大きく動いていくことになる。

映画では、河童実在派の清水に対して、河童懐疑派の川上(声 大川透)という専門家も登場している。川上は国立水棲動物研究所副所長で水棲動物が専門。河童研究の分野でも有名で、河童に関する著書も多数あるという。ワイドショーではコメンテーターとして意見を求められ、最初はクゥの存在に懐疑的だったが、ビデオ撮影されたクゥの映像を見て驚きの声をあげていた。

 


テケテケ / テケテケ2 2009年 アートポート
監督 白石晃士
脚本 秋本健樹

映画『テケテケ / テケテケ2』には、加古川大学の行方教授(演 螢雪次朗助手の武田慎(演 阿部進之介の二人が登場する。行方教授は、テケテケについてたずねられ、地元に伝わる噂と過去の事件について話すなど、都市伝説について語ってくれる大学教授ではあるのだが、過去の殺人事件について「ちょっとめずらしいことがあると、みんな面白おかしく尾ひれをつけたがる」「こんなこと調べてもしょうがないんじゃない?」と発言するなど、都市伝説やオカルトへの興味は薄いようだ。

助手の武田にしてもそれは同じで、長身で口下手な武田は、一作目の「テケテケ」ではほとんど出番がないが、「テケテケ2」では元の大学を離れて事件の現場である名古屋に転勤してきており、自身もテケテケによる被害の拡大を食い止めるために奔走する。しかしその後の武田は学者キャラ的にはあまり有能とは言えない。都市伝説について調べて「都市伝説っていうのは噂が現実になり現実が噂になってさまざまに変化しながら広がっていくもんなんだ」と、その性質について語っているものの、怪異への対処方法について本で読んだ知識を試して失敗するなど、都市伝説そのものにはあまり詳しくない様子もうかがえる。

行方教授と武田は都市伝説やオカルトに関する興味や知識に薄く、またその専門もとくに語られない。そのため、都市伝説を題材とするフィクションに登場する学者キャラクターではあるが、作中の描写からだけでは彼らが民俗学者だとは言い切れない。ただし、監督の白石晃士『幽霊ゾンビ』(2007年)『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-01【口裂け女捕獲作戦】』(2012年)『貞子vs伽椰子』(2016年)などのほかの作品でも作中に民俗学者を登場させている。『テケテケ』もこれらの作品と同じ系譜に属していることは間違いないだろう。

 

 

シライサン 2020年 松竹
監督 脚本 安達寛高

シライサン

シライサン

  • 飯豊まりえ
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映画『シライサン』では、溝呂木弦という民俗学者の存在が語られる。溝呂木は地方の古い民話や伝承の収集を行っていたが、作中時間で二十五年前に死亡。亡くなる直前、かつてとある山間にあったという「目隠村」について調査していた。その研究の過程のどこかでシライサンに関する民話を発見、それを近所の少年に教えてしまったことが、その後に呪いを拡散させる引き金となってしまう。映画の中で映る溝呂木の著書のページには「目隠村の呪禁紋」の図や「目隠し村に伝わる風習では、死者の手を合掌させ、穴を開けて鈴をつける。死者が起きた時、自由を奪い、音で知らせる為だという」などの記述が残されていた。溝呂木にはほかに『民間伝承蘇生論』、『奇習と民族信仰』、『民間伝承における死生観』、『たつのさとのわらべばなし』など多数の著書があり、登場人物たちは溝呂木の著書を手がかりに怪異へ対処しようとする……。

ここまで具体的な情報を持ち、かつ怪異発生の発端にかかわる重要人物でありながら、尺の都合なのか何なのか、溝呂木が出てくるのは映画の中では名前のみで、回想シーンすら与えられていない。『シライサン』は民俗学者が(間接的には)出てくるが、民俗学者が(直接的には)出てこない映画なのだ。

というのも、この映画における怪異「シライサン」は映画の中で登場人物による言及があるように、現代のSNSにおける人々の承認欲求を擬人化したキャラクターであり、民俗要素はそれっぽさを演出するためのものという側面が強い。

ゆえに、民俗要素を象徴する溝呂木もまた名前やエピソードが参照される情報のひとつに過ぎないということなのだろう。

とは言え、溝呂木が村を調査している場面とまでは言わずとも、せめて過去にシライサンの話を語っている映像くらいはあってもよかったのではと思うのは求めすぎか。

なお、この映画には、怪異の被害者となる大学生の父親役で、またもや諏訪太朗が出演している。

 

 

 

コーカサスの女虜、もしくはシューリクの新しい冒険 Кавказская пленница, или Новые приключения Шурика 1967年
監督 レオニード・ガイダイ, 脚本 ヤーコフ・コスチュコフスキー/モーリス・スロボツコイ/レオニード・ガイダイ

映画『コーカサスの女虜、もしくはシューリクの新しい冒険』主人公シューリク(演 アレクサンドル・デミャネンコ)は、民俗学を研究している金髪にメガネの青年。この映画は、同じレオニード・ガイダイ監督の『作戦コード<ウィー>とシューリクのその他の冒険』(1965年)のシリーズ作品に当たる。

民間伝承を調査しにきた青年シューリクが、酒が弱いのに現地の住民から酒を飲まされまくり、悪役から「これはこういう風習なんだよ!」「なるほど!」といいように騙されまくる。そういう風習だからと言いくるめられたシューリクは、ついにはヒロインの誘拐に協力してしまう(映画の中での「誘拐婚」は悪の地方長官が考えた偽の風習ということになっているが、現実の誘拐婚は東欧や中央アジアの一部にいまだ残る風習である*5

古い伝承や風習を調査している民俗学者が偽の風習を吹き込まれて騙される、という滑稽な描き方はほかの映画の民俗学者キャラクターの描写ではあまり見られない。半世紀以上前の作品ながら、おそらく世界でもっとも陽気で馬鹿っぽく民俗学者を描いた映画のひとつだろう。

 

 

キャンディマン Candyman 1992年 トライスター ピクチャーズ

監督 脚本 バーナード・ローズ
原作 クライヴ・バーカー「禁じられた場所」

映画『キャンディマン』主人公ヘレン・ライル(演 ヴァージニア・マドセンは、イリノイ大学の大学院生。同じ院生のバーナデット・"バーニー"・ウォルシュ(演 ケイシー・レモンズ)とともに都市伝説について研究している(原作小説では社会学記号論が専門だが映画の中では詳細には出てこない)

映画の冒頭では、ヘレンの夫で大学教授のトレヴァー・ライル(演 ザンダー・バークレーの都市伝説の講義の場面がある。トレヴァーが「下水道の白い巨大ワニ」の話を学生に振ると、マイアミの話だという意見とニューヨークの話だという意見が出る。トレヴァーは、同じ内容なのにどうしてこんなにも場所がかけ離れているのかと問いかけ、「事実はこうだ。下水道にワニはいない。キャンプファイアーでの楽しい作り話だ。このような話を”現代口承伝説”(modern oral folklore)という。都市社会の恐怖が無意識に表れたものだ」と説明する。この都市伝説の講義は、ヘレンの台詞では「urban resend’s lecture」とあるのだが、字幕では「口承伝説の講義」と訳されている。映画が日本公開されたのは1993年。まだ「都市伝説」という訳語が広く一般化していなかったであろう当時の翻訳事情がうかがえる。

この映画に登場する研究者たちは社会学が専門で民俗学者ではないが、都市伝説にまつわるオカルト事件に翻弄される研究者たちの描き方は、以降のホラー映画に少なからず影響を与えていると思われる。

 

 

ルール Urban Legend 1998年 コロンビア ピクチャーズ
監督 ジェイミー・ブランクス, 脚本 シルヴィオ・ホータ

映画『ルール』に登場するウィリアム・ウェクスラー(演 ロバート・イングランドは、ペンドルトン大学で都市伝説の講義を担当している大学教授。講義に使用するためと称して都市伝説に登場するロープや斧などを大学の研究室の隠し部屋に所蔵している。そして、二十五年前に起きた殺人事件の唯一の生き残りでもあったことから、現在起こっている都市伝説になぞらえられた連続殺人事件の犯人に疑われる。しかしこれはミスリードで、のちに無惨にも車のトランクの中から死体で発見される。

ウェクスラー教授を演じたロバート・イングランドは、映画『エルム街の殺人』(1984年)のフレディ役などの怪奇的な役で有名であり、配役も込みでいかにも殺人犯であるかのようにミスリードを狙っていると思われる(しかし「研究室にロープや斧を隠し持っている時点で犯人でなくてもだいぶヤバい奴では?」という気もする)。ウェクスラー教授はとくに民俗学者とも社会学者とも呼ばれていないようだが、映画の中の怪人的なオカルト研究者を語る上では欠かせない存在と言えるだろう。

 

 

ミッドサマー Midsommar 2019年 ノルディスク・フィルム
監督 脚本 アリ・アスター

ミッドサマー(字幕版)

ミッドサマー(字幕版)

  • フローレンス・ピュー
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映画『ミッドサマー』では、主人公ダニー・アーダー(演 フローレンス・ピュー)は心理学を専攻しているが、その恋人クリスチャン・ヒューズ(演 ジャック・レイナー)文化人類学の学生だ。院生のジョシュ(演 ウィリアム・ジャクソン・ハーパー )とクリスチャンは同じ研究室に所属しているらしく、クリスチャンがジョシュの論文のテーマを盗用しようとしたことから二人は対立することになる。

倫理観以外の部分では一見すると博学っぽく有能そうな面を見せるジョシュだが、それ以上に準備不足でうかつな行動が目立ち、見てはいけないと言われていた村の古文書を無断で盗み見るという、ホラー映画で絶対死ぬムーブをかまして期待を裏切らずに死ぬ。この映画では予想される死亡フラグを予想通りきれいに回収していく展開が見どころだが、犠牲となった学生たちの残された家族はもちろんのこと、学生が休みの間に一斉に失踪した大学の教職員とその中にいたであろう人類学ゼミの教授の、その後の混乱と心労は察するに余りある。

 

 

 

 


(まだ見てない! 個人的に近いうちに見たい、民俗学者が出てくる映画)

 

獣の戯れ 1964年

三島由紀夫の同名小説が原作の映画。

あらすじによると物語のラストで在野の民俗学者が出てくるらしい。

 

 

 

スタフ王の野蛮な狩り 1979年

ソ連映画民俗学の研究をしている大学生が主人公。

日本ではソフト化されていないが、日本語字幕なしの動画版がYouTubeで公開されている。

 

 

 

ガメラ巨大生物審議会 1999年

映画『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』の公開に先行して発売されたオリジナルビデオ作品。

民俗学者小松和彦が巨大生物審議会の有識者の一人として本人役で出演している。

 

 

 

銀の男 六本木伝説 / 銀の男 青森純情篇 2002年

民俗学研究者の女性がホストに聞き取り調査をするという体裁でストーリーが語られる。

麿赤児民俗学の権威を演じている。

 

 

 

幽霊ゾンビ 2007年

ホラー映画。異端の民俗学者がタクシーに轢かれ幽霊となって現れる。

監督は『貞子vs伽椰子』と同じ白石晃士

 

 

 

サーダカー 2007年

ホラー映画。峰岸徹民俗学者の役で出演。

 

 

 

闇に囁くもの 2011年

ホラー映画。ラヴクラフトの同名小説の映像化。

 

 

 

みんなで一緒に暮らしたら 2011年

フランス・ドイツ合作映画。民俗学を研究するドイツ人学生が登場する。

 

 

 

口裂け女 リターンズ 2012年

ホラー映画。民俗学を研究する大学院生が主人公。

 

 

 

3人のアンヌ 2012年

韓国映画。物語の舞台の案内人のひとりとして民俗学者の女性が登場する。

 

 

 

Go Down Death 2013年

アメリカ映画。架空の民俗学者ジョナサン・マロリー・サイナスが書いたという民話の世界を描く。

 

 

 

青鬼 THE ANIMATION 2017年

アニメ映画。高校の民俗学研究部員たちが主人公。

 

 

 

アラーニェの虫籠 2018年

アニメ映画。民俗学者の青年が解説役として登場する。

 

 

 

クシナ 2018年

人間の美しさを証明しようとする人類学者が男子禁制の村を訪れる。

出てくるのは民俗学者ではなく人類学者のようだが*6、あらすじと予告編映像から受ける印象はかなり民俗学っぽい。

 

 

 

恐怖人形 2019年

ホラー映画。民俗学者かどうかはわからないが、呪いを研究する老教授が出てくるらしい。

 

 

 

シャーリィ 2020年

Shirley [DVD]

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  • Elizabeth Moss
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シャーリィの夫で、神話や民俗学も専門だったという実在した批評家スタンリー・エドガー・ハイマンが登場する。

 

 

 

いとみち 2021年

豊川悦司が主人公の父親の民俗学者を演じている。

 

 

 

 

あなたの民俗学者イメージはどこから?

さて、とりあえず、把握できた範囲の情報をまとめてみた。……見てない作品のほうが多いじゃん、という指摘はその通りで返す言葉もないが、いまはどうかご容赦願いたい。まとめているうちにいつのまにか増えてしまったのだ。

 

しかしタイトルを並べてみるとわかるように、民俗学者がメインで出てくる映画の数は、マンガや小説と比べると全体では圧倒的に少ない。民俗学者キャラクターが主役クラスの映画となるとその数は本当にわずかだ。さらにその中で誰もが知るヒット作となれば、タイトルはおのずと限定される。

とすると、たとえば「映画に出てくるような民俗学者」のイメージを想像する場合、そのイメージは、不特定多数の作品からではなく、実はかなり限定的な範囲からつくられているということになるのではないだろうか……?

 

だが一方で、漠然としたイメージというものは、そこまできっちりと限定できるものではないこともまた事実だ。

たとえば、Wikipediaの「ゴジラ (架空の怪獣)」のページには「民俗学者の伊佐山嘉利は、ゴジラは太平洋戦争で犠牲になった人々の怨念の集合体だと主張する」とあるが(2021年11月現在)*7、少なくとも映画『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001年)の本編では伊佐山が「民俗学者」だとは言及されておらず、公式設定かどうなのかイマイチはっきりしない。

映画『ミッドサマー』(2019年)は、日本語公式サイトでは「家族を不慮の事故で失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人と共に」とあるが*8、公式パンフレットでは「男友達──人類学と民間伝承に興味を持つ」とあり*9、専攻が民俗学なのか人類学なのか微妙に一貫しない。

また、映画『キャラクター』(2021年)では、菅田将暉演じる主人公の漫画家が描く作中作の漫画の登場人物の一人に「犯罪歴史家」が登場するが、長崎尚志によるノベライズ版*10では該当の人物の肩書きは「民俗学者」となっており設定にブレが生じている。

このように、フィクションでなにかしら古い伝承や歴史について語っているが肩書きがはっきりしない人物は、大雑把に「民俗学者」と看なされがちなのだ*11

そもそも、しばしば「民俗学者っぽい」キャラクターの代表格のように挙げられる『妖怪ハンター』の稗田礼二郎からして、考古学者であって民俗学者ではない。

 

通俗的イメージの元となるソースはひとつではない。しかし、そこにフィクションの影響があるかもしれないとしても、必ずしも具体的な作品が特定できるとも限らない。

 

民俗学っぽい」フィクションと聞いたとき、あなたは何を想像するだろうか。そこに解説役や探偵役に相当するあやしい学者的な人物は登場しているだろうか。あなたはその人物を「民俗学者だ」と思って記憶してはいないだろうか。

しかし、少しばかり立ち止まって考えてみてほしい。あなたが想像する「民俗学者っぽい」キャラクターも、よくよく確認してみれば実は民俗学者ではないかもしれないのだ。

 

ここまで読んで、どうして民俗学や人類学がこんなにもオカルト的なイメージと結びつけられやすくなってしまったのか? ……という、歴史的経緯について知りたくなったという人は、吉田司雄 編著『オカルトの惑星 1980年代、もう一つの世界地図』(青弓社、2009年)ASIOS 編著『昭和・平成オカルト研究読本』(サイゾー、2019年)などの本に詳しいので、興味があればぜひそちらを参照してみるとよいかもしれない。

 

 

 

今回も長くなってしまった。

 

最初に述べたように、このまとめは不完全である。ここに挙げられたもの以外にも、民俗学者キャラクターや民俗学者っぽいキャラクターが出てくる映画作品はたくさんあるだろう。とくに90年代Jホラーブーム以前の映画に登場する「民俗学者っぽい」キャラクターが登場する映画については、現状ほとんど把握できていない。

 

この記事は、前回の「民俗学っぽいマンガ」記事の補足として書かれている。

そして、前回の記事は、「ホラーとかオカルト系のマンガにたいてい民俗学者っぽいキャラが出てくるのってなんで?」という疑問に端を発していた。

 

ここから先に考えられるであろう、映画の中の民俗学描写の意味や、現実の民俗学とフィクションの民俗学の関係などについては、ぜひとも映画や民俗学に詳しい知識を持つ誰かが、別の機会に別のかたちで、よりクリアに語ってくれるだろうことを期待して、今回は筆を置きたいと思う。

 

 

 

 

 

*1:単騎、千里を走る。 - 映画・映像|東宝WEB SITE” https://www.toho.co.jp/movie/lineup/tanki/story.html

*2: “Your Meme is Internet Folklore - Annenberg Media” https://www.uscannenbergmedia.com/2016/05/12/your-meme-is-internet-folklore/

*3: ほかに民俗学におけるインターネット・ミームの説明として、島村恭則『みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ?』(平凡社新書平凡社、2020年)では、アマビエを例にインターネットの「ミーム・サイクル」の仕組みについて述べられている(238〜240頁)。

*4: "今和次郎 採集講義 関連映画上映会 | 青森県立美術館

http://www.aomori-museum.jp/ja/schedule/info/event/movie/506

*5:“アラ・カチュー - Wikipedia” 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC

*6:人類学者もまた、映画の中ではホラーやオカルトと関連づけられやすい存在のようだ。詳しくは以下の論考を参照のこと。 Weston, Gavin, Jamie F. Lawson, Mwenza Blell, and John Hayton, “Anthropologists in Films: ‘The Horror! The Horror!’,” American Anthropologist 117(2) (2015), pp.316–328.

*7: "ゴジラ (架空の怪獣) - Wikipedia"

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%82%B8%E3%83%A9_(%E6%9E%B6%E7%A9%BA%E3%81%AE%E6%80%AA%E7%8D%A3)

*8: "映画『ミッドサマー』公式サイト 絶賛公開中" 

https://www.phantom-film.com/midsommar/

*9:『ミッドサマー』公式パンフレット、ファントム・フィルム、2020年、12頁

*10:長崎尚志『キャラクター』小学館文庫、小学館、2021年

*11:逆に原作の民俗学者要素が映画版では採用されなかった『サイレン ~FORBIDDEN SIREN~』(2006年)、『ゆめのかよいじ』(2013年)、『零 〜ゼロ〜 女の子だけがかかる呪い』(2014年)のような例もある。

民俗学っぽいマンガとは何か ——民俗学者が出てくるマンガまとめ

 

 

 しかし、世間では「妖怪は民俗学が扱うものだ」と考えるのがどうも一般的な捉え方のようです。翻って、「民俗学は妖怪を研究する学問だ」と考えている人までいるようです。

 これは、明らかな誤解というよりありません。

 

京極夏彦『文庫版 妖怪の理 妖怪の檻』角川文庫、角川書店、2011年、32頁)

 

 

 

「独断と偏見で選ぶ〝民俗学っぽいマンガ〟」を選ぶために

 

このように思ったことはないだろうか。

 

「ホラーとかオカルト系のマンガって、たいてい民俗学者っぽいキャラが出てくるよね」

 

わかる。

でもじゃあ、実際、民俗学者が出てくるマンガってどんなものがあって、それってどれくらいあるのだろうか?

そもそも、ホラーとかオカルトとか伝奇とか妖怪とかのマンガには、どうしてよく民俗学者が出てくるのだろうか?

しかし、その問いに答えることは、実は容易ではない。

 

なぜか。

 

たとえば、考古学には、櫻井準也『考古学とポピュラー・カルチャー』同成社2014年)という主に映画やドラマの中で描かれる考古学のイメージについて論じた好著がある。

 

考古学とポピュラー・カルチャー

考古学とポピュラー・カルチャー

  • 作者:櫻井 準也
  • 発売日: 2014/09/30
  • メディア: 単行本
 

 

しかし、民俗学には同じような関心のまとまったものがないのである。

むろん、まったくないわけではない。

 

倉石忠彦『都市化のなかの民俗学岩田書院2018年)では、「第六章 仮想の民俗学民俗学者」において、小説やマンガで描かれる民俗学について論じられており、『宗像教授伝奇考』や北森鴻の「蓮丈那智フィールドファイル」シリーズ、秋月達郎の「民俗学者・竹之内春彦の事件簿」シリーズなどが取り上げられている……が、現時点では当方未読。

また、マイケル・D・フォスター /ジェフリー・A・トルバート 編著 The Folkloresque: Reframing Folklore in a Popular Culture World (フォークロレスク:ポピュラーカルチャーの世界における民俗学の再構築、ユタ州立大学出版局 、2016年、日本語未訳)では、民俗学的なテーマ、キャラクター、イメージからなる創作作品やステレオタイプ的な民俗学描写を「フォークロレスク folkloresque」という概念で表すことが提唱されている……とのことだが、こちらも未読。

 

都市化のなかの民俗学

都市化のなかの民俗学

 
The Folkloresque: Reframing Folklore in a Popular Culture World

The Folkloresque: Reframing Folklore in a Popular Culture World

  • 発売日: 2015/11/01
  • メディア: ペーパーバック
 

 

では、民俗学的なテーマのマンガをひとつひとつ当たっていけばよいのかと言うと、それもまた簡単ではない。

まず、民俗学的なテーマのマンガとは何かというところで躓く。

ぶっちゃけ、作品の雰囲気がなんとなく民俗学っぽい感じがする程度の意味でよいようにも思うが、作品の選び方としてはそれもあまりに大雑把にすぎる。

では、作中で民俗学的な手続きが踏まえられていたり、明らかに民俗学分野の著作を参照しているのなら、それは民俗学的なマンガと言ってしまってよいのではとも思うが、だが、それでも当てはまる作品は膨大なものとなってしまう。

ならば、どうするのがよいのか。

いかんせん、筆者には民俗学に関する専門知識が乏しく、時間的にも技術的にも個人の作業でできることには限界がある。

ので、ここではあまり話の幅を広げずに、

 

マンガの中に民俗学者かそれに準ずるキャラクターが登場している。

 

この一点に絞って、話を進めたい。

ゆえに、この記事で取り上げるマンガ作品に関しては、必ずしもそのマンガが民俗学的と言えるかどうかは問わないものとする。

つまりは、該当作品に民俗学の学問的な視点や手続きが含まれているかいないかは、ここで取り上げる作品の条件には、あまり関係がないということである。

登場人物に民俗学者がいれば、とりあえずは民俗学っぽいマンガだろうと判断する。

そのように定義する。

 

……そして、話を始める前に、また少し厄介な点があるとすれば、マンガ作品の中では「民俗学」と「民族学」がしばしば混同されがちだということだろうか。

民俗学」と「民族学」。

それが誤字なのか誤植なのか、はたまた作者が最初から誤用しているのかどうかは、はた目には判断しづらい。コマの吹き出しでは「民俗学者」と名乗っているのに、登場人物紹介欄や別媒体の紹介では「民族学者」になっているケースなどはいくつも見つけられる(逆も然り)。

今回は、そういうケースについては、作品の内容により適宜判断するものとする。

 

以上、この記事は、そういった視点で執筆されている。

その点、どうかご了承いただきたい。

 

 

民俗学者は旅先で怪奇に遭遇する

 

民俗学っぽいマンガと言えば妖怪マンガ。

妖怪マンガと言えば水木しげる

というわけで、水木しげる貸本漫画時代の作品『地底の足音』1962年)には、白井博士という民俗学者が登場する。 

 白井博士は鳥取大学民俗学研究室の老教授であり、青山という学生から鳥取砂丘の奥地にある不気味な村に迷い込んだという相談を持ち掛けられる。話を聞いた白井博士は、その村には知られざる太古の妖術の伝承があるのだと語る。

口髭に眼鏡、ネクタイ、おそらく白衣に身を包み、研究室でタバコを燻らす白井博士のスタイルは、世間一般が想像するであろう大学教授イメージの枠にだいたい収まるものと思われる(この場合、実際の大学教授がどのような姿であるかは問題としない)。

しかし、老成したその見た目に反し、博士の取る行動はかなりアクロバティックである。

白井博士は、言語学者にも読めなかった暗号文字を独自に解読し、助手の学生とともに村へ乗り込み、怪物が現れるまで山に潜伏。物語冒頭では主人公っぽかった学生青山君を差し置き、よみがえった怪物ヨーグルトとほぼ単身で対決する。そして大地が唸りを上げる中、巻物を手に呪文を唱え、最終的に怪物に打ち勝っているのである。

 

『地底の足音』は、ハワード・フィリップ・ラヴクラフト『ダンウィッチの怪』1929年)を翻案した作品として知られる。

登場する博士がやたらアクロバティックなのも、おおむね原作通りの展開となっている。

ラヴクラフト全集 5

ラヴクラフト全集 5

 

がしかし。

原作『ダンウィッチの怪』では、白井博士の原型となったヘンリー・アーミテッジ教授は、ミスカトニック大学図書館の館長として登場するのであり、民俗学者ではない。

対して、水木しげるの『地底の足音』では、白井博士が「民俗学研究室」の所属であることは繰り返しコマ中に明示されている。

この違いには、いったいどういった理由があるのか。

なぜ、白井博士は「民俗学者」でなければならなかったのか。

あいにく文学史や水木マンガには疎いために、確かなことはよくわからない。

が、その理由のひとつには、水木しげるが原作小説からマンガへと作品を再構成するに当たり、『ダンウィッチの怪』だけでなく、『闇にささやくもの』1931年)等の民俗学者が登場する他のラヴクラフト作品や、あるいはラヴクラフト以外の他の海外作家の作品を参照した上で設定を練っていたためではないか、というくらいの想像をすることは許されるだろうか。

そう考えると、日本のマンガにおける「民俗学者が旅先で怪奇現象に遭遇する」パターンの雛形は、おおよそラヴクラフトにある、という意外でも何でもない説明を導き出すこともできそうだが、性急に結論を出すことは今は避けたい。

 

さて。

 

民俗学者が登場するマンガと言ってまず思い浮かぶ有名な作品として、ここでは次に諸星大二郎妖怪ハンター」シリーズ(雑誌掲載は1974年~、単行本 既刊8巻)*1を挙げたい。

 いや確かに、「妖怪ハンター」シリーズの主人公稗田礼二郎は考古学者であり、民俗学者ではない。しかし、神話や民間伝承に通じ、各地の村を聞き取り調査して歩く稗田礼二郎の姿は、考古学者というよりも民俗学者のそれを想起させるに足るものである。

また、黒スーツに長髪で農村を闊歩する独特な稗田礼二郎スタイルは、のちの民俗学っぽいフィクションの多くにその影を落としている。

 

櫻井準也「日本の漫画作品に描かれた考古学者(1) 195070年代」(2016年)でも、次のように指摘されている。

 

これに対し、これらの考古学者イメージ引用者注:手塚治虫石ノ森章太郎などの195070年代の漫画作品に登場する考古学者像〕と異なるのが、諸星大二郎の『妖怪ハンター』の稗田礼二郎である。考古学者と自称していながら他のキャラクターと比較すると細身で肩までかかる長髪、黒いネクタイとスーツ姿は、前述した考古学者イメージ引用者注:中年男性で普段はスーツ、発掘調査のときは作業着姿やサファリ・ルック〕とは明らかに異なる姿であり、むしろ民俗学者宗教学者のイメージに近い。

 

(櫻井準也「日本の漫画作品に描かれた考古学者(1) 195070年代」『尚美学園大学総合政策研究紀要』第28巻、尚美学園大学総合政策学部2016年、109頁)

 

 「細身で肩までかかる長髪、黒いネクタイとスーツ姿」が「民俗学者宗教学者のイメージに近い」という解釈には異論もありそうだが、少なくともあまり考古学者っぽくはないことは確かだろう*2

 

そして、稗田礼二郎自身は民俗学者ではないが、「妖怪ハンター」シリーズにおいて脇を固めるキャラクターたちには、考古学より民俗学分野の人物が目立つ。

たとえば、在野の民俗学者で準レギュラー的なキャラクターの橘(「花咲爺論序説」「天孫降臨」など)や、稗田の影響で民俗学を学ぶようになった少年天木薫(「花咲爺論序説」「夢見村にて」など)、天木とともに集落の調査をする民俗学者宮沢(「悪魚の海」)などのように、シリーズ初期から近年の作品まで、民俗学者キャラクターは作品の随所に登場している。

 

以降のマンガに登場する民俗学者イメージの生成に、「妖怪ハンター」シリーズが与えた影響は決して小さくはないだろう。

 

そして、「妖怪ハンター」シリーズと並んで外してはおけないと思われる作品が、星野之宣「宗像教授」シリーズである。 

 「宗像教授」シリーズ(雑誌掲載は1990年~、単行本 全22巻)*3の主人公宗像伝奇は東亜文化大学の民俗学教授。その名前や風貌はもちろん実在する民俗学者南方熊楠がモデルだが、しかし、世界の神話を語る壮大なモノローグや、それに呼応するダイナミックなストーリー展開、必要とあらば海外の遺跡へも足を伸ばす宗像教授のフットワークの軽さなどからは、勝手な印象だが、考古学あるいは文化人類学的なスケールの大きさを感じる。

また、小太りな体形、口髭、山高帽、スーツ、黒い外套、ステッキ……という宗像教授の定番のスタイルは、櫻井準也『考古学とポピュラー・カルチャー』などが指摘するところの、マンガや映画に描かれる旧来的な考古学者イメージとも当てはまる部分が多い。

 

民俗学者っぽい考古学者、稗田礼二郎

考古学者っぽい民俗学者、宗像伝奇。

 

この対照性は面白いが、ここでは必要以上に文章をこねくり回すことはせず、なるべくサクサクと話を進めていくことにしたい。

 

山口譲司 画/金成陽三郎 原作『ミステリー民俗学者八雲樹(単行本 全9巻、ヤングジャンプ・コミックスBJ集英社200204年)では、榊大学民俗学研究室が物語の拠点(ドラマ版では慈英女子大学)。主人公の八雲樹は研究室の助手であり、多忙な教授に代わり各地の村へ調査に赴き、旅先で怪奇な事件に遭遇する。細身で長髪の八雲の見た目からは、先達稗田礼二郎の影響を感じ取ることもできるだろうか。

 

山田穣がらくたストリート(単行本 全3巻、バーズコミックス、幻冬舎コミックス200814年)の稲羽信一郎は文化人類学者だが、これははっきりと稗田礼二郎のパロディキャラクター。また稲羽の、民話を収集するために主人公たちが住む土地に滞在している、というパターンは民俗学者的でもある。

 

吉川景都『葬式探偵モズ』(単行本 既刊全4巻、『葬式探偵モズ』怪コミック、角川書店2013年/『モズ 葬式探偵の挨拶』2014年、『モズ 葬式探偵の憂鬱』2016年、『モズ 葬式探偵の帰還』2017年、以上、オフィスユーコミックス、集英社クリエイティブ)の百舌一郎は、上陽大学民俗学教授。日本の葬儀が専門の百舌は、めずらしい葬式があれば全国どこへでも足を運び、毎度舞い込む事件を見事民俗学的に解決に導く。ライバルとして、百舌との因縁から民俗学を捨て、葬儀不要論者となった旧友なども登場してアツい。

 

山口譲司 著/木口銀 原案協力『村祀り』(単行本 既刊11巻、芳文社コミック、芳文社2015年~)の三神荒は、民俗学にも精通する流浪の「本草学者」。ある目的のために各地の村を渡り歩く。この作品では、同じく山口譲司作の『ミステリー民俗学者八雲樹』ともテーマや道具立てが似通っており、また頻出するエロティックな描写も共通している。

 

堀尾省太ゴールデンゴールド(単行本 既刊7巻、モーニングコミックス、講談社2016年~)は瀬戸内海の離島、寧島が舞台だが、第1話において、10年以上前に福の神の島の伝承を求めて「民俗学かなんか調べとるゆう人」が島を訪れたことが語られている。

 

井上淳哉/左古文男『四万十怪奇譚』(単行本 全1巻、アクションコミックス、双葉社2018年)の黄泉山霊士は極東大学民俗学科准教授。黄泉山は、三十代の独身美形民俗学者というキャラクターだが、本作品はマンガ・小説・コラム等を交えて四万十の民俗を紹介することを目的としており、作中で怪異に遭遇するのはもっぱら学生で撮影係の池田佳の役目。黄泉山はいわゆるナビゲーター的な立ち位置である。

 

樹生ナト『アカツキ論文 暁影文の民俗学ミステリー考察』(単行本 全1巻、MBコミックス、実業之日本社2019年)の暁影文は都市大学文化人類学科の准教授。フィールドワークで国内外の土地と大学を行き来している。本作品においても、撮影アシスタントの学生須羽野ひなが語り手となっており、暁は解説役である。

 

 

 

 

民俗学者はオカルティスト

 

オカルトや心霊現象、超自然的存在を主題とする作品においては、物語の舞台が怪しい山奥の村などではなくとも、民俗学者が登場すること自体が、ストーリー中にオカルト的展開が起こることのサインとなり得る。

またそれは、その民俗学者自身が超自然的な存在を信じているか否かに関係しない。作品が超自然的な存在を扱っている場合、その作品に民俗学者が登場することは、ある種の「お約束」となっているのである。

 

今市子百鬼夜行抄(雑誌掲載は1995年〜、単行本 既刊27巻)*4には、佐久間弓絵恵明大学社会学科教授が登場する。 

百鬼夜行抄(1) (Nemuki+コミックス)

百鬼夜行抄(1) (Nemuki+コミックス)

 

 佐久間は「レポートの鬼」と呼ばれるほどのスパルタ指導で知られており、著書に『変容する民俗神』などがある民俗学者である。

佐久間教授自身は直接的なオカルティストではないようだが、彼女のもとで学ぶ主人公飯嶋律は家系的な霊能力者である。律は、物語開始時点では高校生だったが、のち作中時間が経過するにつれて大学生となり、従姉で大学院生の広瀬晶と同様に恵明大学で民俗学を専攻している。

百鬼夜行抄』は、基本的に一話完結型の作品だが、事件を持ち込む/巻き込まれる人物として時折民俗学者が登場する。たとえば、晶の学部時代のゼミの担当教員だった民俗学専攻教授の江崎は、フィールドワーク先で盗み出した御神体のたたりを受けて死亡しており、晶がのち在籍することになる安藤研究室も霊のたまりやすい場所であった。浄北大学民俗学科助手の氷頭怜子は晶のライバル的なキャラクターとして登場し、現時点単行本最新27巻所収「彼岸の果実」においても、朝倉圭悟という民俗学の大学教授が出てきている。

ここでは、オカルトストーリーと民俗学者が舞台装置的にセットになっているのである。

田中励儀「今市子百鬼夜行抄』論――民俗学に支えられたストーリー」(2005年)によれば、本作品は、折口信夫柳田国男の著作に取材したと思われる民俗学的な題材がストーリーの根幹をなしている。その一方で、幸田露伴泉鏡花といった日本の幻想文学、またエドガー・アラン・ポーやモンタギュウ・ロウズ・ジェイムズなどの欧米怪奇小説の要素も積極的に取り入れられているという*5

そして、どうもこれら作品の取材源の中に、民俗学者がオカルトストーリーによく登場するようになった理由があるように思われる。

 

が、まず先に他の作品の具体例を挙げていこう。

 

山岸凉子「籠の中の鳥」山岸凉子山岸涼子作品集11 傑作集 5 籠の中の鳥』(白泉社1984年)所収)には、身寄りのなくなった主人公の少年を引き取る民族学者(民俗学者?)人見康雄が登場する*6。主人公の少年は特殊な鳥類の能力を受け継ぐ一族の末裔であり、人見はその特殊な境遇を承知した上で少年を引き取っている。また、同作者の『鬼』(単行本 全1巻、希望コミックス、潮出版社1997年)では、民俗学研究サークル〝不思議圏〟に所属する大学生グループが山奥の寺を訪れ、山中で神秘的現象を目の当たりにする。

 

多くのホラー作品を発表するささやななえ(現在のペンネームはささやななえこ)の『たたらの辻に(単行本 全1巻、PFビッグコミックス小学館1988年)では、主人公である近藤姉弟の叔父健男は民俗学を研究しており、冒頭でその専門知識を語ることで、物語の導入的役回りを演じる。

 

岩明均『七夕の国』(単行本 全4巻、ビッグコミックス小学館199799年)の丸神正美は主人公南丸洋二が通う大学の歴史・民俗学の教授であると同時に特殊な超能力を持つ一族の末裔である。

 

草川為ガートルードのレシピ(単行本 全5巻、花とゆめコミックス白泉社200103年)は、ヒロインと悪魔を巡るバトル系の少女マンガ。主人公の女子高生佐原漱の兄である佐原久作は、大学で民俗学ゼミの助手をしているが、その実態は別人物の霊魂に乗っ取られた姿であった。

 

山下和美不思議な少年(単行本 既刊9巻、モーニングKC講談社2001年~)の「フランツ・カウフマン博士」(単行本 第5巻所収/モーニングKC講談社2006年)に登場するフランツ・カウフマンは90歳の老人。民俗学者で、時代や場所を超越して現れる不思議な少年について探求している。

 

木下さくら東山和子tactics(単行本 既刊全15巻、ブレイドコミックスマッグガーデン200213年/続編の「tactics新説」は、既刊1巻、クロフネコミックス、リブレ、2019年~)の主人公一ノ宮勘太郎民俗学者だが、作中で学者らしい行動は目立たず、本人が語るように実態は趣味と実益を兼ねた妖怪退治屋である。一ノ宮の大学時代の後輩である蓮見了寛は、真面目に民俗学者として名をなしているようだ。

 

もりたじゅん「四十九日まで」(『もりたじゅん名作集』所収/クイーンズコミックス、集英社2002年)の主人公須藤和彦は民俗学界の権威である山口教授の娘と結婚した研究者。物語は須藤が妻の由美子を交通事故で喪うところからスタートするが、由美子は幽霊となって須藤のもとに戻ってくる。

 

熊倉隆敏もっけ(単行本 全9巻、アフタヌーンKC講談社200209年)の檜原姉妹の祖父(本名不詳)は、農家と拝み屋を兼業する一方で、神峯町歴史民俗資料館で非常勤の顧問を務める広義の民俗学者である神峯町歴史民俗資料館で非常勤の顧問を務めており、民俗学者ではないが民俗学的な専門知識を持つ人物である(※2020/7/3 訂正)*7 *8

 

みなぎ得一足洗邸の住人たち。(単行本 全13巻、ガムコミックス、ワニブックス200213年)の怪異ハンターの一人でもあるバロネス・オルツィは元民俗学教授。

 

介錯神無月の巫女(単行本 全2巻、角川コミックス・エース、角川書店200405年)では、メインキャラクターである大神ソウマの兄の大神カズキは長髪で和装の民俗学者だった。

 

冬目景幻影博覧会(単行本 全4巻、バーズコミックス、幻冬舎コミックス200511年)の楳実亮平は、主人公松之宮遥の大学時代からの友人。楳実は大学に残り民俗学考現学の研究をしており、ボサボサの頭に袴を履く姿は書生風である。その見た目に沿ってか、最終話では作中の超常体験をもとに自作の推理小説を書き上げている。

 

佐藤友生妖怪のお医者さん(単行本 全15巻、講談社コミックス、講談社200711年)では、主人公護国寺黒郎の育ての親である妖怪濡れ女は、民俗学者の夫婦から子供を盗まれており、その悲劇が主人公の出生の秘密にかかわっているという過去設定があった。

 

衣谷遊『極東綺譚』(単行本 全3巻、マガジンZコミックス、講談社200708年)では、全身に刺青をまとう異端の民俗学者九鬼銃造が主役。

 

CLAMPXXX Holic(単行本 全19巻、KCDX講談社200311年)の主人公四月一日君尋の友人である百目鬼静は高校生だが、物語終盤(16巻以降)では大学から大学院へと進み、民俗学研究室で助手を務めている。

 

トジツキハジメ『俺と彼女と先生の話』(単行本 全1巻、ウィングスコミックス、新書館2009年)の鈴木一乙は、民俗学を研究している男で、『僕と彼女と先輩の話』『俺と彼等と彼女の話』と続く三部作シリーズでもある本作品のキーマン。

 

はざまもり『暮林教授の怪異事件簿』(単行本 全1巻、エルジーエー コミックス、青泉社、2014年)の暮林は民俗学の教授。霊感があり、幽霊の存在を見抜く。

 

ミツナナエ『久世さんちのお嫁さん』(オトメチカ出版、2015年)の久世七史は若き民俗学教授。幼妻の紅緒に降りかかる祟りの謎を解明するために、夫婦でイチャイチャしながら研究に没頭する日々を送る。

 

江野スミ『たびしカワラん!!(単行本 全3巻、裏少年サンデーコミックス小学館 2015年)の瓦屋千蔭は明石室学院大学非常勤講師。かつての地獄の呪術師礫石原との衝撃的な出会いや幼少期の境遇をきっかけとして、大学で呪いの研究を続けている。また、額にツノがある怪人物減野羊介教授が瓦屋の指導者として登場している。

 

小川幸辰『みくまりの谷深』(単行本 全2巻、ハルタコミックス、KADOKAWA2017年)では、地元の民間信仰等を研究している平勢良文という郷土史家が「みくまり」について解説し、物語の導入を誘う。

 

いとうえい『今宵、都市伝説をご一緒に!(単行本 全1巻、ヤングチャンピオン烈コミックス、秋田書店2017年)の笹塚は、主人公の通う大学の民俗学講師。無類の怪異フェチで、妖怪や都市伝説の話題になると見境がなくなる。

 

あまからするめ『うちのアパートの妖精さん(単行本 全5巻、ガルドコミックス、オーバーラップ、201720年)の主人公は妖精が暮らすアパート「常若荘」の管理人だが、大学で西洋民俗学を専攻しており、その知識をもとに住人の妖精たちに対処しようとする。

 

藍本松『怪物事変』(単行本 既刊10巻、ジャンプコミックス集英社2017年~)の蓼丸昭夫は民俗学者。彼はメインキャラクターである蓼丸織の叔父だが、他作品の民俗学者がおおむね主人公サイドに立ち、助言なり問題解決なりをしているのに対して、こちらはむしろマッドサイエンティスト的な役柄。

 

本多創 画/ペトス 原案/橋本カヱ 原作『オカルトちゃんは語れない』(単行本 既刊3巻、ヤンマガKCスペシャル、講談社2019年~)の紙村あきら武蔵野理科大学教授は文化人類学者だが、作中に次々登場する妖怪(亜人)の解説役という意味では「オカルトマンガによくいる民俗学者」的なキャラクターとも言える。

 

tactics 1巻 (コミックアヴァルス)
 
もっけ(1) (アフタヌーンコミックス)

もっけ(1) (アフタヌーンコミックス)

 
怪物事変 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

怪物事変 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

 

 

民俗学者は家にいない

 

高田裕三3×3EYES(単行本 全40巻、ヤンマガKCスペシャル、講談社19882002年)では、主人公藤井八雲の父である藤井一は民俗学教授である。彼は、息子の八雲曰く「妖怪狂いの道楽親父」で、妖怪を追い求め探検に出た末にチベットで遭難し、帰らぬ人となっている。 

3×3EYES(1) (ヤングマガジンコミックス)

3×3EYES(1) (ヤングマガジンコミックス)

 

 『3×3EYES』にあるような、「調査のために家を空けがちな父親」というキャラクター像は、他の作品の民俗学者にも少なからず見られる傾向である。

 

御形屋はるかぽてまよ(単行本 全5巻、アクションコミックス、双葉社200511年)の主人公森山素直の父である森山皇大は妖怪の研究をしている学者だが、明るく大雑把な性格であまり家に帰ってこない。

 

福盛田藍子『ハヤチネ!(単行本 全5巻、ガンガンコミックスオンライン、スクウェア・エニックス201214年)のメインキャラクターであるリリアン・アッカーは、アメリカ人の父とドイツ人の母を親に持つ少女。民俗学者の父親の影響で日本の民俗文化に強い関心があるが、彼女の父親は、仕事のためにほとんど家に帰ってこない。

 

松志ぐら『トオノカタリ』(単行本 全1巻、マッグガーデンコミックス アヴァルスシリーズ、マッグガーデン2013年)の主人公桐原千景の父親は民俗学者で、「先生」と呼ばれ周囲からも慕われているが、主人公の登場と入れ替わるように調査へと出かけてしまう。

 

月見隆士『テラーナイト』(単行本 全5巻、裏少年サンデーコミックス小学館201719年)は、具現化した恐怖〝テラー〟というオカルト的怪物が現れる街が舞台。主人公遠野セイの父親は民俗学者だが、オカルトにのめり込み、物語開始時点で失踪している。

 

白鳥うしお『怪しことがたり』(単行本 既刊2巻/全3巻予定、マッグガーデンコミックス ビーツシリーズ、マッグガーデン201820年)の主人公高原八千穂の父親高原正孝は民俗学者だが、フィールドワークのために家を空けがちで単行本第1巻ではほとんど姿を見せない。

 

ぽてまよ : 1 (アクションコミックス)

ぽてまよ : 1 (アクションコミックス)

 

 

櫻井準也「『となりのトトロ』と考古学」(2019年)によれば、「家庭を顧みずに遺跡の研究や調査、あるいは冒険に熱中する変わり者という父親像」は、かつてのアニメ作品の考古学者の設定によく見られたものだった。しかし、映画『となりのトトロ1988年)を境として、カードキャプターさくらなどに見られるように、その像は次第に「家族を大事にする「やさしいお父さん」」へと変化していったという*9

しかし今のところ、民俗学者には『となりのトトロ』のような、誰もが知るレベルのエポックメイキングとなる作品はない。

そのためか、いまだにフィクションにおいては、民俗学者といえば、仕事のこととなると周囲のことをほっぽり出して平気で何日も家を空ける(また場合によっては、これにオカルトフリークの変人という要素が加わる)というイメージが先行してしまっている現状がある。

 

しかし民俗学者の名誉のためにも一応補足しておくと、調査研究に没頭しろくに家に帰ってこない非常識人という人物像は、何も民俗学者や考古学者に限ったものではなく、フィクションにおける「学者キャラクター」全般に見られる傾向である。

 

井山弘幸「科学者の実像と虚像~サイエンス・イメージの歴史的変遷」(2001年)によれば、ロズリン・D・ヘインズ 著 From Faust to Strangelove : Representations of the Scientist in Western Literatureファウストからストレンジラブまで:西洋文学における科学者表象、ジョンズ・ホプキンズ大学出版局、1994年、日本語未訳)では、西洋文学における科学者像の6つの類型を示しているという。

同論文によれば、それは以下の6つである。

 

R.D.ヘインズの西洋文学における科学者像の6類型

1 錬金術 alchemist …… 実現不能の妄想にとり憑かれた偏執狂。

2 愚かな専門家(収集家) foolish virtuoso …… 世事に疎く、専門のことに没頭するあまり日常生活もままならない変人。

3 冷酷無情人間 unfeeling scientist …… 陰湿に科学の大義のみを目指した結果、人間性を喪失した科学者。

4 英雄的探求者 heroic adventurer …… 常人には信じられない思考のひらめきからまたたく間に有用な理論を思いつく直感型の天才知識人。

5 無力な科学者 helpless scientist …… 自分の発明したものさえ制御できない駄目科学者。

6 理想追求型 idealist …… 夢見る科学者。科学知識の発展が必ず人間社会の改善に結びつくと信じユートピア建設を目指す科学者。

 

……以上の6つである*10

この類型は、欧米の文学作品から抽出されたものだが、日本のマンガに登場する科学者たちにも、ある程度適用可能であるように思われる。そして実例から見るに、民俗学者や考古学者もその適用範囲に漏れない。

 

たとえば、「妖怪ハンター」シリーズで異端の学説を唱える稗田礼二郎などは、「1 錬金術 alchemist」の人文学バージョンとも言えそうだし、『3×3EYES』の藤井八雲の父親などの家庭を顧みずフィールドワークに出かけっぱなしの非常識な変人タイプは「2 愚かな専門家(収集家) foolish virtuoso」に当てはめられそうである。

また、民俗学者が事件を解決する探偵役である場合は、シャーロック・ホームズ的な「4 英雄的探求者 heroic adventurer」となることもあるだろう。

 

このように、マンガ作品においては、民俗学者もまた学者である以上、従来的な学者イメージに落とし込まれて表現されている。

 

 

 

民俗学者は陰惨に死ぬ

 

先に紹介した作品では、民俗学者はおおむね主人公かそれに近い位置にあった。その場合、民俗学者は探偵役や解説役として人間関係的に安定した地位を与えられている。

しかしこと猟奇サスペンスにおいては、その平穏は一変する。猟奇サスペンス系の作品で民俗学者がサブキャラクターである場合、彼らがたどる末路は往々にして悲惨である。

 

原つもい『この島には淫らで邪悪なモノが棲む』(単行本 全9巻、電撃コミックスNEXTKADOKAWA201418年)の主人公梶浦太郎は、東南大学で民俗学を専攻する学生だが、指導教員である深田教授は秘祭を調べるために主人公らを引率して島を訪れるが、第1話で開幕あっけなく死ぬ。

 

渡辺潤『クダンノゴトシ』(単行本 全6巻、ヤンマガKC講談社201517年)民俗学者橘秀美城栄大学教授は妖怪に詳しく、不可解な祟りに戸惑う主人公たちに助言を施す役柄だが、中盤は活躍するも最終的に死ぬ。

 

室井まさね『屍囚獄』(単行本 全5巻、バンブーコミックス、竹書房201517年)民俗学者葦原は比良坂大学教授。調査のため女子学生たちとともに八坂村を訪れるが逃げようとして死ぬ。

 

志水アキ『雛接村』(単行本 全1巻、Nemuki+コミックス、朝日新聞出版、2019年)では、連作の中で民俗学の研究をする女子大学生が登場するエピソードがあるが、やはり無事では済まない。

 

金成陽三郎 画/さとうふみや 原作『金田一少年の事件簿の「雪夜叉伝説殺人事件」(単行本34巻所収/KCマガジン、講談社1993年)に登場する響史郎は、大学で民俗学を専攻する青年で、伝説が残る地で金田一らとともに殺人事件に居合わせるという、いかにもな死にそうなシチュエーションを揃えているが、めずらしくこちらは生き残っている。

 

 

 

 

少年少女は民俗学を学びたい

 

主人公たちが大学生や研究者でない場合、大学で民俗学を専攻しているわけではないが、主人公らが民俗学的な領域を扱う部活やサークル等に所属しているというタイプのストーリーも多々見られる。

 

ゴツボ×リュウジ『もののけもの』(単行本 全4巻、角川コミックス・エース、角川書店200708年)では、ヒロイン醒井二子は「民俗学研究部」のリーダー。また、主人公物部伊吹の父親は民俗学者である。

 

夏元雅人 画/金子良馬 原作『G.A.P ~転居先不明郵便課~』(単行本 全2巻、YKコミックス、少年画報社201516年)の主人公間地那央人は宗像高等学院に通う高校生で「都市伝説探究部」の部長。

 

水野英多 画/城平京 原作『天賀井さんは案外ふつう』(単行本 全4巻、ガンガンコミックス、スクウェア・エニックス201617年)の高校生たちは、「郷土史維持管理部」というやや変わった部活動に所属する。

 

篠原ウミハル『鬼踊れ!!(単行本 全3巻、芳文社コミックス、芳文社201719年)は、高校の「民俗芸能部」が物語の舞台だが、顧問の新任教師は舞踊の装束を化け物と見間違うレベルの素人だった。

 

藤丸豆ノ介 画/友麻碧 原作/あやとき キャラクター原案 『浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。』(単行本 既刊4巻、ビーズログコミックス、KADOKAWA2018年~)のメインキャラクターの茨木真紀、天酒馨、継見由理彦らはそれぞれ妖怪の生まれ変わりであり、表向きには「民俗学研究部」というていで、裏では妖怪関連の問題に取り組む活動をしている。

 

 

 

 

先生は民俗学に詳しい

 

また現行の職業としては民俗学者ではないが、その登場人物が現在の職業に就く以前に民俗学を学んでいたために民俗文化に詳しいというタイプの作品もある。

 

文月晃海の御先(単行本 全15巻、ジェッツコミックス白泉社200714年)では、奥津島高校の教師で主人公らの担任の如月珠江は、東京大学で古代民俗学を専攻していた。

 

うめ『南国トムソーヤ』(単行本 全3巻、バンチコミックス、新潮社、201214年)では、羽照那島小学校の教師で主人公の担任かつ下宿の隣人でもある朝倉スズは、大学で社会民俗学を研究していた過去を持つ。

 

海の御先』と『南国トムソーヤ』は、ともに沖縄の離島が舞台であり、民俗学テイストが濃い作品である。

 

海の御先 1 (ジェッツコミックス)

海の御先 1 (ジェッツコミックス)

 
南国トムソーヤ (1)

南国トムソーヤ (1)

 

 

 

 

民俗学者はモデルになる

 

福西大輔「ミステリー小説に見る「民俗的世界観」 「都市」から「田舎」への視点」(2016年)によれば、日本のミステリー小説において民俗学者を小説の中に登場させた先駆けは、江戸川乱歩『緑衣の鬼』1937年)であるという。 

 

日本のミステリー小説では、民俗学者を小説の中に登場させることもおおくみられる。先に紹介したような柳田國男折口信夫のような実在した民俗学者を登場させるものから、架空の民俗学者を登場させるものもある。その先駆けは、江戸川乱歩の『緑衣の鬼』(1937)に登場する夏目菊太郎という人物で、民俗学者であり博物学者であった南方熊楠をモデルにしたものであった。

 

(福西大輔「ミステリー小説に見る「民俗的世界観」 「都市」から「田舎」への視点」『熊本大学社会文化研究』vol.142016年、156頁)

 

 

ミステリー小説だけでなく、フィクションに登場する民俗学者という意味では、ここに泉鏡花戯曲『夜叉ヶ池』1913年)に登場する萩原晃や、同じく泉鏡花『山海評判記』1929年)の邦村柳郷を加えてもよいかもしれない。

萩原と邦村はどちらも柳田国男をモデルとするキャラクターである。 

夜叉ケ池・天守物語 (岩波文庫)

夜叉ケ池・天守物語 (岩波文庫)

 

 

『柳花叢書 山海評判記/オシラ神の話』(ちくま文庫2013年)の東雅夫の解説を引用する。 

 

たとえば、奇しくも柳田の「巫女考」連載開始と同じ大正二年三月、「演芸倶楽部」に発表された戯曲「夜叉ケ池」には、「国々に伝わった面白い、また異った、不思議な物語を集めてみたい」と志して遍歴する青年・萩原晃が登場するが、その姿が若き日の柳田を彷彿せしめることは、『柳田國男事典』(勉誠出版)の岩本由輝「小説に書かれた柳田國男」にも記載がある。

しかしながら、右にもまして強烈な印象を与えるのが、〔中略〕「山海評判記」における「邦村柳郷」博士であろう。

 

東雅夫「編者解説」、泉鏡花柳田國男 著/東雅夫 編『柳花叢書 山海評判記/オシラ神の話』ちくま文庫筑摩書房2013年、586587頁)

 

 

ミステリー小説に限らず、柳田国男折口信夫南方熊楠等の実在する民俗学者をモデルとしたキャラクターが登場する文芸作品は数多くあり、若き日の柳田国男をモデルとした田山花袋『野の花』1901年)、同じく柳田国男の体験に基づいた島崎藤村の詩『椰子の実』1901年)折口信夫をモデルとした三島由紀夫『三熊野詣』1965年)等々、名立たる作家にその例を求めることができる。

 

では、マンガではどうだろうか。

 

西岸良平鎌倉ものがたり(単行本 既刊35巻、アクションコミックス、双葉社1985年~)には、妖怪や幽霊等の超自然的なキャラクターが多く登場するが、主人公一色和正の祖父である一色信夫は高名な民俗学者とされ、これは折口信夫が元ネタと思われる。

 

加藤元浩Q.E.D. 証明終了』(単行本 全50巻、講談社コミックス、講談社19982015年)の「人間花火」(単行本28巻所収/講談社コミックス、講談社2007年)には、柳田国男をもじった民俗学者の高柳国雄が登場する。

 

椎橋寛『ぬらりひょんの孫(単行本 全25巻、ジャンプコミックス集英社200813年)の柳田(やなぎだ)は、主人公たちと敵対する組織「江戸百物語組」の幹部。これも柳田国男をモチーフにしたと思われるキャラクターで、名前だけでなく、作中では組織のために巷の怪談を聞き集めるという役割を担う。

 

樹生ナト 画/大塚英志 原作『とでんか』(単行本 全7巻、カドカワコミックス、角川書店200914年)宮田昇太(みやた のぼった)学園都市大学比較文化学類民俗学研究室教授は、名前も見た目も宮田登がモデル。主人公月極駐の大学時代の指導教員という設定であり、これは原作者である大塚英志の実体験が少なからず反映されているものと推測される。

 

樹生ナト 画/大塚英志 原作『ぼくとぬえちゃんの百一鬼夜行』(単行本 全3巻、角川コミックス・エース、角川書店201617年)の主人公の少年は柳太(やなぎった)という名前で、これも柳田国男のパロディだろう。

 

双葉はづき 画/てにをは 原作/ロウ キャラクター原案『モノノケミステリヰ』単行本 全1巻、MFコミックス ジーンシリーズ、KADOKAWA2014年)には、南方熊楠から名前を採ったと思われるキャラクター南方うつひが登場する(『モノノケミステリヰ』の登場人物たちの名前は、他にも「月岡」や「河鍋」のように妖怪にゆかりのある(とされる)人物から採られている)。

 

鎌倉ものがたり (1) (アクション・コミックス)

鎌倉ものがたり (1) (アクション・コミックス)

  • 作者:良平, 西岸
  • 発売日: 1985/05/19
  • メディア: コミック
 
ぬらりひょんの孫 19 (ジャンプコミックス)

ぬらりひょんの孫 19 (ジャンプコミックス)

  • 作者:椎橋 寛
  • 発売日: 2011/12/02
  • メディア: コミック
 

 

 

 

民俗学者は実在する

 

日本を舞台にしたオカルトマンガには頻繁に登場してくる民俗学者だが、翻って、実在の民俗学者を取り扱った作品、あるいは作品世界に実在の民俗学者を登場させる作品は、それほど多くはない。

 

実在の民俗学者を登場させるマンガは、大塚英志原作の作品がその大部分を占める。

刊行年順にタイトルを並べると、北神伝綺森美夏 画、単行本全2巻、ニュータイプ100%コミックス、角川書店199799年)『木島日記』森美夏 画、単行本 全4巻、ニュータイプ100%コミックス、角川書店19992003年)『オクタゴニアン』(杉浦守 画、単行本 全1巻、角川コミックス・エース、角川書店2005年)『松岡國男妖怪退治 黒鷺死体宅配便spin-off山崎峰水 画、単行本 全4巻、角川コミックス・エース、KADOKAWA201114年)『くもはち』山崎峰水 画、単行本 全1巻、角川コミックス・エース、角川書店2005年)『八雲百怪』森美夏 画、単行本 既刊4巻、カドカワコミックス、角川書店2009年~)『恋する民俗学者(中島千晴 画、単行本 既刊1巻、角川コミックス・エース、KADOKAWA2014年)……等々の作品が挙げられる。 

北神伝綺 上 (角川コミックス・エース)

北神伝綺 上 (角川コミックス・エース)

 
木島日記 上 (角川コミックス・エース)

木島日記 上 (角川コミックス・エース)

 

 これらの作品では、柳田国男折口信夫が、大塚英志偽史近代日本で陰に陽に活躍するさまが描かれる。

 

水木しげる水木しげる遠野物語(単行本 全1巻、ビッグコミックスペシャル、小学館2010年)及び『神秘家列伝 其ノ4角川ソフィア文庫角川書店2005年)の一編は、柳田国男の事績を伝記的に扱った作品だが、その一方で、水木しげる『新ゲゲゲの鬼太郎 スポーツ狂時代』(初出『週刊実話1978年掲載/のち、『ゲゲゲの鬼太郎 スポーツ狂時代』角川文庫、角川書店2010年)にも、なぜか妖怪にまじって民俗学者柳田国男が出てくる話がある。

 

詩野うら『偽史山人伝』(単行本 全1巻、ビームコミックス、KADOKAWA2019年)の収録作「偽史山人伝」は、柳田国男「山の人生」を元ネタのひとつにした作品。作中では、柳原国男『山人の生』なる資料が引用され、「柳田国男の言う山人とは離れた存在であるため、サンジンではなくヤマビトと区別されている」との注釈がある。

 

柳田国男に次いでマンガに登場する民俗学者と言えば、南方熊楠だろうか。

 

なかでも、水木しげる『猫楠 南方熊楠の生涯』(単行本 全2巻、講談社199192年)はよく知られているものである。

また、江川達也日露戦争物語(単行本 全12巻、ビッグコミックス小学館200106年)では、南方熊楠正岡子規高橋是清などと並ぶ文化人として登場している。

他に、岸大武郎てんぎゃん 南方熊楠伝 第1章』(単行本 全1巻、ジャンプ・コミックス・デラックス、集英社1991年)内田春菊 画/山村基毅 原作『クマグスのミナカテラ1巻、新潮文庫、新潮社、1998年)があるが、いずれも未完である。

 

破天荒な逸話で知られる南方熊楠であるが、柳田と同様に、その知名度に比して、伝記や歴史系の作品以外で創作の題材となることは多いとは言えない。

 

高田裕三九十九眠るしずめ(単行本 全3巻、ヤンマガKCDX講談社200406年)は、架空の明治時代が舞台の伝奇SFだが、そこに登場する南方熊楠民俗学者ではなく、粘菌の研究者であったことに由来して、人に寄生する特殊な「菌核」を調べる学生というキャラクターだった。

 

また、南方熊楠を扱った作品の変化球としては、じゅうあみ『我らひとしくギャルゲヒロイン(単行本 全1巻、角川コミックス・エース、KADOKAWA2016年)がある。本作品に登場する巫女系ヒロインの藤白神楽は、重度の南方熊楠マニアという設定で、すべての話題を強引に南方熊楠につなげるという奇抜なキャラクターだった(作中においては、水木しげる『猫楠』が紹介されていた)。

 

折口信夫は、マンガでは、本人よりもその詩的な著作のほうが注目されている。

 

近藤ようこ 著/折口信夫 原作『死者の書(単行本 全2巻、ビームコミックス、KADOKAWA201516年)は、折口信夫の同名書の世界を巧みに表現している。

 

清家雪子月に吠えらんねえ(単行本 全11巻、アフタヌーンKC講談社201419年)には、釈迢空折口信夫)の著作をモチーフとしたキャラクターである釈先生が登場。突如出現した変死体の謎を解くべく活躍するさまは、まさに推理ドラマの探偵を彷彿とさせるものだった。

 

また少し変わりダネとして、狩野アユミ『独裁グリムワール』(単行本 全3巻、MFコミックス、メディアファクトリー201112年)には、主人公御伽グリムの先祖としてグリム兄弟が登場。この作品におけるグリム兄弟は、実は魔術師という設定であった。

  

神秘家列伝 其ノ四 (角川文庫)

神秘家列伝 其ノ四 (角川文庫)

 
猫楠 南方熊楠の生涯 (角川文庫ソフィア)

猫楠 南方熊楠の生涯 (角川文庫ソフィア)

 

 

 

 

民俗学者BLマンガ

 

大学教授と大学生のカップリングはBLマンガにおける鉄板だが、民俗学者もその例外ではない。

これには、砂河深紅『幽霊退治はじめました』(単行本 全1巻、キャラコミックス、徳間書店 2012年)藤井咲耶Monsterの恋愛学』(単行本 全1巻、ダリアコミックス、フロンティアワークス2012年)高山はるな『うぶ☆リーマン』(単行本 全1巻、ダイトコミックスBL大都社2013年)三国ハヂメ『佐倉叶にはヒミツがある』(単行本 全1巻、花丸コミックス・プレミアム、白泉社2017年)タナ『あつめるひと』(スタジオC.I2019年)などの作品がある。

 

 

 

民俗学者エロマンガ

 

「旅する民俗学者が山奥の村を訪れる」というパターンは、成人向けマンガ、いわゆるエロマンガにおいてもよく利用されるところである。

事実、民俗学者あるいは民俗学を学ぶ学生が、淫らな風習の残る村を訪れエロいことになるというタイプの作品は多い。

いくらか例を挙げても、甲賀三郎「河童異聞」(『裸のクレヨン』単行本 全1巻、ツカサコミックス、司書房2005年)新堂エル新堂エル文化人類学単行本 全1巻、ムジンコミックス、ティーアイネット2013年)ねこまたなおみ「祭りのあと」(『なまイキざかり』単行本 全1巻、ワニマガジンコミックススペシャル、ワニマガジン社2016年)高遠くろ助「異国のアングラフェスティバル」(『あなぼこ☆お便姫ちゃん』単行本 全1巻、エンジェルコミックス、エンジェル出版2016年)廣瀬周『淫蘭島 日本禁忌秘境列伝』非成人向けマンガ、単行本 全1巻、チャンピオンREDコミックス、秋田書店2017年)若月「巨女妖怪娘エロエロ百鬼夜行(『巨女褐色淫魔』単行本 全1巻、ムーグコミックス、ジーウォーク2017年)、 跳馬遊鹿「御宮祭り~秘祭の真実~」(『悦靡に濡れて』単行本 全1巻、エンジェルコミックス、エンジェル出版2018年)あるぷ「闇憑村」(『めるてぃーりみっと』、GOTコミックス、ジーオーティー2020年)……など枚挙にいとまがない。

 

 

  

マンガ以外のメディアにも触れておこう。

 

 

民俗学者とアニメ

 

まずは、アニメ映画作品から挙げてみたい。

 

スタジオジブリの映画魔女の宅急便1989年)において、主人公キキの父親であるオキノは、原作小説では魔女等を研究する民俗学者という設定があるが、この設定は映画のほうでは映画本編のストーリーとはあまり絡んではいなかった。

河童のクゥと夏休み2007年)には、河童懲罰武士の子孫にして河童の腕を所蔵する民俗学者の清水が登場。

君の名は。2016年)宮水三葉の父親宮水俊樹は、若い頃は民俗学者だった過去があり、この設定は小説版において補完されている。

『青鬼 THE ANIMATION2017年)では、高校の民俗学研究部員たちが主人公。

『アラーニェの虫籠』2018年)では、主人公りんが民俗学者の時世と出会う。

 

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テレビアニメではどうだろうか。

 

デジモンアドベンチャー0233話「今日のミヤコは京の都」20001119日放送)に登場する武ノ内春彦はデジモンを妖怪の一種と考える大学教授だった。これはシリーズディレクター及び演出を務めた角銅博之の考えが直接的に反映されたものである*11

 

ふたりはプリキュア Splash Star39話「珍獣ミミンガ大騒動!?20061112日放送)は、プリキュアの妖精が一般人に目撃され噂が広まってしまう話だが、そこに登場する柳田国吉は、伝説の珍獣ミミンガについて証言する老民俗学者*12

ゲゲゲの鬼太郎 テレビアニメ第6シリーズ』85話「巨人ダイダラボッチ」(20191215日放送)には、ダイダラボッチ研究が専門の民俗学者の門倉が登場する*13

 

これらの例からは、子供向けファンタジーアニメの民俗学者は、アニメオリジナルの幻想生物を主人公たちとは別視点で解釈する役どころとして登場している傾向が見える。

 

深夜アニメでも、ファンタジー的な――特にオカルト色の強い作品には、民俗学者の姿が散見される。

神霊狩/GHOST HOUND2007年)の駒玖珠孝仁は、元民俗学助教授の宮司

丈月城ライトノベルが原作のアニメカンピオーネ!2012年)の主人公草薙護堂の祖父である草薙一朗は、日本の伝統芸能を専門としていた元民俗学者

逢空万太ライトノベルが原作のアニメ『這いよれ! ニャル子さん2012年)の主人公八坂真尋の母親の八坂頼子は大学時代に「実戦民俗学」なる学問を修めた邪神ハンター。

『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』201516年)の人吉孫竹は、超人を専門とした「超人民俗学」の研究者。

迷家-マヨイガ-2016年)のこはるん(神山こはる)は、大学院で民俗学を専攻する院生。

『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』2020年)に登場する里見灯花は、原作ゲームでは叔父が民俗学者という設定だった*14

 

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アニメでは、民俗学者はゲストキャラクターやサブキャラクターとしてはたびたび登場するものの、民俗学者自身が主人公のアニメ作品は稀である。

しかし、小説やマンガでは多用される、民俗学者が怪しい伝承の残る村を訪れるタイプの話が、アニメになると『迷家-マヨイガ-』くらいしか見当たらないのは意外といえば意外だろうか。

 

 

民俗学者とテレビドラマ

 

民俗学者が出てくるテレビドラマはそれほど数がないが、2000年代以降の主だったものを挙げてみる。

『月曜ドラマスペシャル 秋の旅情サスペンス3 歴史ミステリー歴史ロマンサスペンス 宗像教授の伝奇考』20001120日放送)月曜ミステリー劇場 原作サスペンス特集I 宗像教授の伝奇考2200391日放送)『宗像教授伝奇考32007310日放送)

TRICK2episode 5 妖術使いの森」2002315日、322日放送)

『ミステリー民俗学者 八雲樹-ヤクモイツキ-』20041015日~1217日放送)

『蓮丈那智フィールドファイルI 凶笑面』2005916日放送)

『ご近所探偵・五月野さつき3 殺意のキャンプ場』(2008年12月1日放送)

『漬けモノ学者・竹之内春彦 京都殺人100選』2012910日放送)

彼岸島「第5話」「第6話」20131122日、1129日放送)

『塔馬教授の天才推理2 湯殿山麓ミイラ伝説殺人事件』2014919日放送)

ストレンジャー バケモノが事件を暴く』2016327日放送)

『ミステリー作家朝比奈耕作 花咲村の惨劇』201666日放送)、『ミステリー作家 朝比奈耕作シリーズ2 鳥啼村の惨劇』2018312日放送)

『遺留捜査スペシャル』20181111日放送)

東京二十三区女』2019412日~517日放送)

……などがある。

民俗学者が登場するドラマは、ミステリー小説やコミックが原作のサスペンスドラマが多いようである。

 

トリック(2) [DVD]

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ミステリー民俗学者 八雲樹 DVD-BOX

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民俗学者デジタルゲーム

 

ゲームに登場する民俗学者キャラクターと言えば、最近ではイースIX -Monstrum NOX-日本ファルコム2019年)のバラン、『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』スパイク・チュンソフト2017年)の真宮寺是清などがいたが、これらは少々例外的なものだろう。

 

民俗学者の活躍ぶりが発揮されるのは、もっぱら伝奇系のホラーゲームにおいてである。

挙げられる例としては、『零』シリーズテクモほか、2001年〜)SIREN』シリーズソニー・コンピュータエンタテインメント、2003年〜)流行り神』シリーズ日本一ソフトウェア、2004〜09年)、また商業作品ではないがよく知られているもので、フリーゲーム『怪異症候群』シリーズなどがある。

特に『零』シリーズにおいては、麻生邦彦、宗方良蔵、真壁清次郎、柏木秋人、渡会啓示……と、シリーズを通して民俗学者が多数登場しており、ある意味で昨今もっとも民俗学的なゲーム作品であると言うこともできるだろうか(なお、『零』シリーズの民俗学者はだいたい陰惨に死ぬストーリーがパターン化している)。

 

他にも、ホラーゲームにおいては民俗学フレーバーの強いものはあるが、ゲームについては筆者の予備知識がほぼ皆無であり、また今回、引用の典拠となる適当な書籍や論文も見つけられなかったため、これ以上何を言えばよいかマジでわからない。

ので、ここでは以下の電ファミニコゲーマーの特集記事のリンクを貼ることで例示に代えたい。

  

news.denfaminicogamer.jp

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他方、ソーシャルゲームでは、D×2 真・女神転生 リベレーション』の福本和史、『メギド72』のフォラス、『神に愛された花嫁 ~真夜中の契り~』の四百田要……などのようにゲーム自体が伝奇ジャンルに収まる類の作品の他に、グランブルーファンタジーのヨハン、『かんぱに☆ガールズ』のローザ・ルウェリンなどのように一見して民俗学的要素や伝奇的要素を含まない作品においても、民俗学者キャラクターが登場する。これは、一作品で多種多様なキャラクターを擁するソーシャルゲームならではの現象だろうか。

 

 

 

民俗学者と小説

 

民俗学者が登場する小説は多くあるが、ここでは近年の国内小説について有名どころをいくつかを紹介するに留めたい。

 

小説世界の民俗学者は、主にミステリーのジャンルでその活躍が描かれる。

北森鴻「蓮丈那智フィールドファイル」シリーズ(新潮社、2000~14年)秋山達郎「民俗学者・竹之内春彦」シリーズ(有楽出版社、2004~11年)鯨統一郎「作家六波羅一輝の推理」シリーズ中央公論新社、2006年~)三津田信三「刀城言耶」シリーズ講談社、2006年~)などの作品がよく知られる。「蓮丈那智」「竹之内春彦」「六波羅一輝」は、それぞれドラマ化もされている。

 

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイルI―

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイルI―

 
厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

 

 

実在の民俗学者を登場させる作品では、折口信夫を主人公としたサスペンス 井沢元彦『猿丸幻視行』講談社、1980年)などが有名だが、2000年代以降だと、こちらも折口信夫が登場する 大塚英志『木島日記』角川書店、2000年)柳田国男神隠し事件の謎を探る 長尾誠夫『神隠しの村 遠野物語異聞』桜桃書房、2001年)岩田準一江戸川乱歩の関係を描く 岩田準子『二青年図 乱歩と岩田準一(新潮社、2001年)南方熊楠が殺人事件を調査する 鳥飼否宇『異界』角川書店、2007年)、のちの柳田国男である詩人松岡が登場する 京極夏彦『書楼弔堂 炎昼』集英社、2016年)といった作品がある。ごく最近では、直木賞受賞でも話題となった 川越宗一『熱源』文藝春秋、2019年)、著者が大学院の民俗学専攻出身でもある近代伝奇SF 柴田勝家『ヒトの夜の永い夢』早川書房、2019年)なども特筆される。

 

新装版 猿丸幻視行 (講談社文庫)

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【第162回 直木賞受賞作】熱源 (文春e-book)

【第162回 直木賞受賞作】熱源 (文春e-book)

 

 

 

 

民俗学者が登場するマンガが民俗学っぽいとは限らない

 

日本のマンガ作品における民俗学者の描かれ方が、その中身をよくよく見るとあまり民俗学っぽくないことが多いのはなぜか。

その理由は、端的に言えば、日本のフィクションの中の民俗学者イメージが、欧米のホラーや探偵小説に登場する「オカルト探偵」に強い影響を受けているからだろう。

 

オカルト探偵とは何か。

この記事で取り上げてきた民俗学者キャラクターには、なんら超常的な能力を持たない例も含まれているが、百鬼夜行抄の飯嶋律、tacticsの一ノ宮勘太郎もっけの檜原姉妹の祖父などは、いわゆる霊能力者であり、その特異な能力を以て作中で起こる事件を解決する。

ではなぜ、フィクションにおいては民俗学者と霊能力者が結び付けられやすいのか。

除霊や妖怪退治というと、陰陽師や修験者や密教僧やエクソシストなどのほうがふさわしいのではないか。

が、欧米文学の流れで見ると、超常現象や心霊事件を解決するのはしばしば学者の役目である。

 

金﨑茂樹「サイキック・ディテクティブの登場 英米小説のあるジャンルについて」(2017年)では、ゴースト・バスターズや妖怪探偵、メン・イン・ブラックなどの超常現象の専門家を「サイキック・ディテクティブ」の語で総称しており、その起源をヴィクトリア朝文学まで遡って論じている*15

そこで言及されているオカルト探偵たちをいくつか抜き出してみる。

 

・マルチン・ヘッセリウス …… 医師 / 作品:ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ「吸血鬼カーミラ」「緑茶」(1872年)

ヴァン・ヘルシング …… 大学教授 / 作品:ブラム・ストーカー「ドラキュラ」(1897年)

・フラックスマン・ロウ …… 心霊学者 / 作品:EH・ヘロン「フラックスマン・ロウの心霊探究」(1898年) 

・ジョン・サイレンス …… 医師 / 作品:アルジャーノン・ブラックウッド「妖怪博士ジョン・サイレンス」(1908年)

・モリス・クロウ ……骨董屋 / 作品:サックス・ローマー「骨董屋探偵の事件簿」(1920)

・ジュール・ド・グランダン …… 大学教授 / 作品:シーバリー・クイン「グランダンの怪奇事件簿」(1925年)

・サイモン・イフ …… 魔術師 / 作品:アレスター・クロウリー「ムーンチャイルド」(1917年)

 

上記に挙げた例以外の作品においても、医師や大学教授が探偵となるケースは数多い*16

探偵が、医師や大学教授。

この傾向は、オカルトジャンルだけでなく、フィクションの探偵全般に当てはまるものだろう。

 

フィクションに登場する民俗学者は、多くの場合において、超常現象の専門家や呪術師のような役割が期待され、あまり民俗学的な存在としては描かれない。

そしてそれはおそらく、東雅夫クトゥルフ神話についての解説において示唆するように、フィクションの中で民俗学者がたどってきた来歴そのものに原因があると思われる。

 

旅と民俗学者と怪奇現象、そして一九三〇年前後の時期といえば、ここ日本でも、あたかも『闇にささやく者』におけるそれを髣髴せしめるような動きが、文壇の内外に認められる。

( ………… )

ちなみにこの「山海評判記」もまた、土俗の伝承に関心を抱く文士が旅の途次、得体の知れぬ秘教集団の暗躍におびやかされる……という謎めいた物語で、ほぼ時を同じくして太平洋の此岸と彼岸で、旅と民俗学と秘教集団をめぐる怪奇小説が生み出されていたことには、なにがなし感慨を禁じえません。

 

東雅夫「解説」、宮崎陽介 漫画/ハワード・フィリップス・ラヴクラフト原作『闇にささやく者 クトゥルフ神話の宇宙怪物』Cコミクラッシックコミックス、PHP研究所、2012年、137頁、142頁)

 

 

現在のマンガに見られるオカルト探偵的な民俗学者描写は、1930年代頃の幻想文学に源流のひとつが あると言えそうだ。

また、先にも引用した、福西大輔「ミステリー小説に見る「民俗的世界観」 「都市」から「田舎」への視点」では、日本のミステリー小説と民俗学の成立とが分かちがたく結びついていることが指摘されていた。

ミステリーと民俗学。 

その関係は、マンガのほうではどうなっているのだろうか。

 

福井健太本格ミステリ漫画ゼミ』 (キイ・ライブラリー、東京創元社2018年)は、ミステリーマンガ全般の歴史を概観することができる良書だが、これを見ると、民俗学要素に関連したところでは、かつての横溝正史ブームの中で横溝作品のコミカライズが相次いだことが、現在の本格ミステリジャンル形成へとつながる重要な現象だったことが述べられている。が、一方で、横溝作品に色濃い民俗学的なテイストは、ブーム以降のミステリーマンガにはさほど引き継がれていないこともまた窺える(……と断言できるほど、今回の記事でミステリーマンガに当たってはいないのだが)。 

本格ミステリ漫画ゼミ (キイ・ライブラリー)

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  • 作者:福井 健太
  • 発売日: 2018/04/28
  • メディア: 単行本
 

 

諸星大二郎は、「妖怪ハンター」シリーズについて、コナン・ドイル江戸川乱歩ラヴクラフトなどの影響があったことをインタビューで述懐している。

 

イメージとしては、シャーロック・ホームズ明智小五郎のように、事件を解決して犯人を捕まえる。その「事件」を「妖怪」に置き換えたのをやってみたかった。ゴーストハントものの小説にある、「普通の人間が専門的な知識で解決する話」にしかたったんですね。

 ( ………… )

〔「死人帰り」の「正統生命系統樹」と「疑似生命系統樹」について〕これはだいぶラヴクラフトの影響がありまして。最初の蛭子の話が疑似生命という設定だから、ここでも系統じみたのを使ったんでしょう。

 

(「諸星大二郎インタビュー 普通の人間が解決する妖怪の物語をやってみたかった。」『諸星大二郎妖怪ハンター』異界への旅』(別冊太陽 太陽の地図帖 おとなの「旅」の道案内 031)平凡社2015年、87頁)

 

 

稗田礼二郎に求められていたのは、シャーロック・ホームズ明智小五郎などの「名探偵」の役割であり、稗田の台詞やモノローグは、クトゥルフ神話と現実の民俗学や考古学の知見がミックスされたものだった。

 

 

 

とりあえずのまとめ

 

だいぶ長くなってしまった。

この辺りで少しまとめておこう。

 

Q.

ホラーやオカルトや伝奇や妖怪もののマンガには、どうしてよく民俗学者が出てくるのか?

 

A.

まず前提として、マンガ作品に登場する民俗学者は、他の学者キャラクターと同様に、従来的な学者イメージに落とし込まれて表現されている。

そして、従来的な学者キャラクターのイメージは主に文学の中で形成されてきた。

欧米の幻想文学や探偵小説では、超常現象や心霊事件を解決するのはインテリである医師や学者の役目であった。

そして医師や学者が探偵として活躍する中で、ラヴクラフト等の怪奇的な作品では、しばしば民俗学者がメインキャラクターに選ばれていた。

また日本の文学においても、民俗学の要素は時代時代において摂取されてきた――たとえば、柳田国男と親交のあった泉鏡花が『夜叉ヶ池』や『山海評判記』を書き、民俗学に取材した横溝正史金田一耕助シリーズを発表する……などのように。

そして、それら幻想文学や探偵小説の要素を取り込んだ水木しげる諸星大二郎が、マンガの中に民俗学者を登場させていった。

さらに、水木しげる諸星大二郎に影響を受けた後続作品によって、お約束的に既成の民俗学者イメージが強化されていくことになる。

 

なんとも大づかみな理解ではあるが、だいたい上記のようなプロセスが積み重なることで、マンガの中の「民俗学者=オカルト探偵」のイメージは出来上がっていったのではないだろうか——

 

今回の記事で考えることができたのは、とりあえずここまでである。

 

マジかよもっとあるだろ。

ご指摘ごもっともである。

 

まず、当初の民俗学っぽいマンガとは何かという問いに結局答えていない。

その上、マンガ作品の傾向を見るにしても、90年代以前の作品にはまったく目が行き届いておらず、マンガ以外のメディアに話を広げておきながら、映画の影響については書かれていない。

加えて、世間一般に民俗学っぽいマンガとされる作品にも少しも言及できていない。最近で言えば、漆原友紀蟲師野田サトルゴールデンカムイ山下和美『ランド』などに触れずに民俗学マンガを語るなんてという向きも当然あるだろう。

あるいは、民俗性を含む作品の系譜を語る際に、手塚治虫奇子石ノ森章太郎龍神沼』といった有名作品を挙げることもできたかもしれない。

しかしながら、民俗学っぽいマンガの中の民俗学っぽい要素を抜き出して考察することは、今回の趣旨ではなかった。

 

また、今回は「民俗学者=オカルト探偵」という構図ありきでまとめてしまったが、吉川景都『葬式探偵モズ』福盛田藍子『ハヤチネ!』篠原ウミハル『鬼踊れ!!』などのように、非オカルトで、なるべく現実の民俗学に即して民俗文化を扱うように努めている作品があることも忘れるべきではない。それらの作品の存在を等閑視してしまったことは、記事構成の都合とはいえ反省点である。民俗学イメージのステレオタイプについて語るのであれば、逆にそういった個別の作品に焦点を当てる方向性でもよかった。

 

そして何よりこの記事は、決して誠実な内容ではないことを付言しておかなければならない。延々とそれらしいことを並べ立ててはきたが、このまとめは、流行病蔓延の時下、図書館がろくに解放されていないことを言い訳に、Amazonや出版社公式サイトに掲載された書籍情報、電子書籍の試し読み、Wikipediaやインターネット検索で出てくる個人の感想などをもとに書かれたクソまとめ記事である。ゆえに、内容をあまり真に受けてはいけない。

 

紙数も尽きてきた。

どうやら私にできることは、ここまでのようだ。

 

しかし私は信じている。

 

民俗学について適切な現状認識を持ち、かつポップカルチャーにも詳しい誰かしかが、書誌情報とかディスクリプションとか、あとフィクションと民俗学の接続の有り様とか文学史や他のメディアにも目配せをして、もっとまとめ方もちゃんとしているなんかいい感じのものを、そのうちきっと書いてくれるだろうということを……

(手記はここで途切れている)

 

 

*1:妖怪ハンター』ジャンプスーパーコミックス、創美社1978年/『海竜祭の夜 妖怪ハンター』ジャンプスーパーエース創美社1988年/『天孫降臨 妖怪ハンター 稗田礼二郎のフィールド・ノートより』ヤングジャンプ・コミックス、集英社1993年/『黄泉からの声 稗田礼二郎のフィールド・ノートより 妖怪ハンターヤングジャンプ・コミックス、集英社1994年/『六福神 稗田礼二郎のフィールド・ノートより 妖怪ハンターヤングジャンプ・コミックスウルトラ、集英社1998年/『魔障ヶ岳 妖怪ハンター 稗田のモノ語り』KCデラックス、講談社2005年/『闇の鴬』KCデラックス、講談社2009年/『妖怪ハンター 稗田の生徒たち1 夢見村にて』ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ、集英社2014

*2:石岡良治『「超」批評 視覚文化×マンガ』では、諸星大二郎『マッドメン』についての論考の中で、「もし稗田礼二郎民俗学者であったとするなら、「異端学者」にはとどまらず、学問の外部にいた可能性が高いように思われる」と述べられている(石岡良治『「超」批評 視覚文化×マンガ』青土社2015年、217頁)

*3:『宗像教授伝奇考』単行本 全7巻、希望コミックス、潮出版社19962002年/『宗像教授異考録』単行本 全15巻、ビッグコミックススペシャル、小学館200511

*4:115巻 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス、朝日ソノラマ19952007年/121巻、眠れぬ夜の奇妙な話コミックス、朝日新聞出版、200712年/22巻~ Nemuki+コミックス、朝日新聞出版、2013年~

*5:田中励儀「今市子百鬼夜行抄』論――民俗学に支えられたストーリー」(一柳廣孝吉田司雄 編著『ナイトメア叢書1 ホラー・ジャパネスクの現在青弓社2005年、151163

*6:この作品は吉本隆明『マス・イメージ論』(福武書店1984年/講談社文芸文庫講談社2013年)でも言及がされている。

*7:著者のツイートによる指摘を受け止め https://twitter.com/kmakra/status/1278715603335839745?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Etweet 上記のように訂正したい

*8:もっけ』については、一柳廣孝『怪異の表象空間 メディア・オカルト・サブカルチャー』(国書刊行会2020年)の「第13章 薄明を歩む――熊倉隆敏もっけ』」に詳しい分析がある。

*9:櫻井準也「『となりのトトロ』と考古学」『尚美学園大学総合政策研究紀要』第34号、尚美学園大学総合政策学部2019年、66

*10:井山弘幸「科学者の実像と虚像~サイエンス・イメージの歴史的変遷」『日本科学教育学会研究会研究報告』第16巻第1号、日本科学教育学会、2001年、1~4

*11:角銅自身の言葉によると、「原作のゲーム機や主要なモンスターからしてデジタルで、妖怪と無縁と思われてるでしょうが、デジモンとは現代の妖怪ではないかという解釈を番組中でも表明しております」とある(角銅博之「妖怪アニメは怖いのか?」『怪』vol.0051KADOKAWA2017年、50頁)

*12:" 39 話 珍獣ミミンガ大騒動!? - ふたりはプリキュアSplashStar - 作品ラインナップ - 東映アニメーション" http://lineup.toei-anim.co.jp/ja/tv/precure_SS/episode/39/

*13:アニメ公式アカウントのツイートより "ゲゲゲの鬼太郎(6期)公式" @kitaroanime50th https://twitter.com/kitaroanime50th/status/1205661188346040321 20191214日午前1030分 投稿 なお、アニメ本編中では門倉が大学に勤めている描写はあるものの、特に民俗学者とは明言されていない。

*14:"マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 - Wikipedia" https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AE%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89_%E9%AD%94%E6%B3%95%E5%B0%91%E5%A5%B3%E3%81%BE%E3%81%A9%E3%81%8B%E2%98%86%E3%83%9E%E3%82%AE%E3%82%AB%E5%A4%96%E4%BC%9D

*15:金﨑茂樹「サイキック・ディテクティブの登場 英米小説のあるジャンルについて」『大阪産業大学論集 人文・社会科学編』29、大阪産業大学学会、2017年、1〜13頁

*16:欧米圏の翻訳小説に登場するオカルト探偵については、以下のブログにもまとめられている。"『幽霊狩人カーナッキの事件簿』ウィリアム・ホープ・ホジスン - 読書感想文(関田涙" https://sekitanamida.hatenablog.jp/entry/carnackitheghostfinder

最近観た映画:『ミッドサマー』『劇場版 ハイスクール・フリート 4D版』

 

・ミッドサマー


『ミッドサマー』本国ティザー予告(日本語字幕付き)|2020年2月公開

2月21日に観た。
とにかく画面が美しい。やはり絵コンテがキマッている映画はよい。ストーリーラインはきわめて単純。人間関係に問題を抱える学生グループが古い因習の残る山村で悲劇に見舞われカタストロフィとカタルシスに至る。あっと驚くどんでん返しだとか、意外な展開ということはほぼ起こらない。こうなるだろうな、こうなったらイヤだな、こうなったら怖いなという展開が矢継ぎ早に繰り出される。観客が「こういう怖いことが起こるに違いない」と予想してしまう画やシチュエーション「だけ」で映像を構成することで、あえて怪奇な造形物や効果音を用いずともじゅうぶんな恐怖感を煽ることができるということを映画全編を通して示している。しかもそれを画面の隅々まで緻密に計算してやっており(空や山はもちろん、花冠の一つから卓上の料理に至るまで歪んだCG処理を施す徹底ぶり)、それでなお成功しているのが素晴らしい。意図することとそれを成功させることは別なのだ。そういう意味で、これは観客のホラー映画へのリテラシーを信頼し、そこに依拠している作品であると言うこともできるか。でも、ストーリーのアイデアのもとにあるのは監督の実体験だとか。怖い。

 

 

・劇場版 ハイスクール・フリート 4D版


映画『劇場版 ハイスクール・フリート』予告編

2月21日に観た。
同題テレビシリーズの劇場版。百合。基本的には学園ものである。今回はテレビ版ではあまり出てこなかった他クラス・他校の生徒の他、いかにも劇場版・OVA版っぽい異国少女キャラも投入され、登場人物はテレビ版よりもずっと増えているはずなのだが、キャラクターの関係性の描き方はむしろテレビ版よりも限定されている。船上の教室内群像劇といった感のあったテレビ版に比べ、劇場版では他のクラスメイトや追加キャラクターたちの存在は後景化し、艦長・岬明乃と副長・宗谷ましろの二人の駆け引きを前面に置いて描く。劇場版オリジナルの脅威として、海上要塞を占拠する海賊集団が登場するが、序盤から丁寧に張られた伏線は中盤以降急速に収束し、その実態もあまり描写されないままで、海賊そのものは話を盛り上げる以上の役割を持つことはない。ここでは世界の危機は岬明乃と宗谷ましろの二人の関係を結び直すための道具立てと化しているのだが(そういえばテレビ版に出てくる「RATtウィルス」も結局劇中でその設定が深掘りされることはなかった)、その点にこそセカイ系百合のお手本とでも呼ぶべき作劇の妙がある。クライマックスの艦船アクションはアニメならではという感じで見もの。

 

 

 

 

しばらくやっていなかったけど、今年はまた映画の感想をぼちぼち書いていこうかなと思います。

 

 

 

 

CiNii 論文 ツイートまとめ ( 2019/03/17,2019/03/19 )

 

 

 

CiNii 論文 ツイートまとめ ( 2019/02/17 )