最近観た映画 : 『劇場版 selector destructed WIXOSS』
『劇場版 selector destructed WIXOSS』
2月19日に観た。
いやあ、よかった。
内容はTVアニメ『selector infected WIXOSS』(第1期)、『selector spread WIXOSS』(第2期)を再構成したうえで新エピソードを加えたもの。
とくにTVシリーズでは悪役に徹していたルリグであった「ウリス」を通じて見た物語になっている。
急展開に継ぐ急展開であったTVシリーズ全24話に加えてさらに設定を掘り下げ話を凝縮しているので、既存の視聴者にとっては、およそ90分とは思えないほど濃い作品になっている(逆に映画だけを突然見ると情報が多すぎてわけがわからないかもしれない)。
というか、映画に加えられた新エピソード分だけでも十分に新作映画が一本できてしまうのではないだろうかとも思った。
TVシリーズから引き続き構成・脚本を担当した岡田磨里は「(...)一見して出口の見えない作品なので、そのあふれ出したものが逆流して……カオスだからこそ、逆にるう子たちの純粋さも際立って見えるんです。ああ、好きだなって思いました(笑)」(『劇場版 selector destructed WIXOSS』パンフレット、スタッフコメントより)と述べていて、この、書きたいものを書いているんだなという生き生きとした感じは作品を見ていてもひしひしと伝わってくる。
一方で思い出すのは岡田が同じく脚本を担当した『心が叫びたがってるんだ。』。
『ここさけ』では「(...)暗い話にはしたくないねと。でも私は、暗かったたり痛かったりするお話を書きたがってしまう……というより、性格自体がそうなので(笑)。どうしてもそちらに寄ってしまうので、調整が難しかったです」(『心が叫びたがってるんだ。』パンフレット、スタッフインタビューより)と語っていた。
『ここさけ』が脚本家自身の嗜好に抑制的であったように伺えたのに対して『selecteor』は対照的に見える。しかし、同じく少女の幼い頃のトラウマが物語の根幹を成しているという点では通底するものがあるともいえるかもしれない。
また、今回の映画のテーマは「名前を巡る物語」であるという。
誰かの名前を呼ぶことと呼ばれること、名前が不変のものとは限らないと知ること、社会から自らの願いの選択を強要されること...などの要素からは少女性を強く感じる。
まどマギのときに誰か言っていた気がするが、これがもし同じ道具立てで、少年たちや男女の物語であったなら、さほど共感を喚起するものにはなっていなかったんじゃないだろうかと思う。
どろどろとした感情に満ちた情緒的な映画だが、監督がハッピーエンドを目指したと言うように観終わったあとの印象はさわやか(ハッピー...? ハッピーエンド...だよね...? 自殺者出てるけど)。
主題歌の歌詞がるう子というキャラクターを意識しつつウリスの心情にも寄せていていい。
ちなみに、アニメの第1期からずっと見てるけど相変わらずカードゲームのルールはまったく理解してないです。
最近観た映画 : 『クリムゾン・ピーク』
『クリムゾン・ピーク』
2月1日に観た。
「幽霊は実在する」と語る主人公のモノローグから始まり、エンドロール直前にはやはり「幽霊は実在する」のモノローグで終わる映画だった。そう、幽霊は実在する。
20世紀初頭のアメリカでとある裕福な実業家の令嬢(小説家志望)である主人公がイギリスから来たイケメン貴族に口説かれて彼の地の古いお屋敷でともに暮らすことになる...というベタベタな前半の流れは「いまどきコバルト文庫でもやらねーぞおい」と思わずつっこみたくなったが、監督が「この映画は、ゴシック・ロマンスのジャンルにおいて、典型的かつ昔ながらの壮大なハリウッド作品へ立ち返ろうとする私なりの試みだ」と述べるように、重ね塗られた過剰なほどのテンプレ様式美こそがこの映画の真髄であるのだろう。
これで下手にアクションシーンとかが入ると一気に全体が台無しになってしまうところだが、構成としてそれは慎重に避けられているように感じた。
とにかく美術が豪華で美しい。特撮の粋を凝らした極上の幽霊屋敷に圧倒される。前提となっているであろうホラーの古典的名作が分かっていればもっと理解が深まるのかもしれないが、それを抜きにしても充分楽しめるし目の保養になる。
視覚的にはたいへん贅沢な時間を過ごすことができた。
あえて個人的な欲を言わせてもらうとすれば、そもそも幽霊が全然怖くないんだよね。恨みを抱えた幽霊たちにもっと活躍の場面があってもよかったかもしれない。
メモ : 『無彩限のファントム・ワールド』の「付喪神」設定について
原作は未読なのであしからず。
『無彩限のファントム・ワールド』は現在放送中のライトノベル原作アニメである。
制作は京都アニメーション。
『ファントム』――それは幽霊・妖怪・UMAなど、人々がそれまで"幻"だと思い続けてきた存在。
そのファントムに対抗するため学院に設置された『脳機能エラー対策室』。
そこに所属する一条晴彦は、先輩の川神舞と共にファントム退治に日々悪戦苦闘していた。
そんな彼らの元に、今日もまた依頼が飛び込んでくる――。
魅惑誘惑幻惑の学園異能ファンタジー。
(TVアニメ「無彩限のファントム・ワールド」公式サイト、「STORY」「INTRODUCTION」より)
主要登場人物には上記引用にもある主人公の一条晴彦とその先輩・川神舞の2人の他に、ファントムを吸い込む能力を持つ和泉玲奈、妖精のファントム・ルル、『歌声』を響かせて戦う能力者・水無瀬小糸、『脳機能エラー対策室』顧問の姫野アリス...などがいる。
『無彩限のファントム・ワールド』は、従来は幽霊や妖怪として一般に実在しないものとして扱われていた『ファントム』の存在が、特殊なウイルスの蔓延によって誰の目にも認識できるようになってしまった世界が舞台となっている。
で、第1話及び第2話において、「付喪神」と称される『ファントム』が登場した。
フィクションにおける付喪神キャラクターの例として、それらの概要をここにメモ的にまとめておこうと思う。
電柱のファントム
(『無彩限のファントム・ワールド』第1話「ファントムの時代」より)
第1話に登場したファントム。
3体一組で延々とリンボーダンスを踊るだけで基本的には無害だが、近辺に電波障害を発生させ問題となっていた。
また、電線部分から電撃を出す。
以下、第1話の会話より。
川神「あの電柱ってこの山で伐られた材木で作られたらしいの。それがファントムになって帰って来たってこと見たい」
川神・和泉・ルル「付喪神?」
一条「そう、あれは人間に棄てられた道具類が恨みを持って変化した妖怪です」
一条「昔この山では伐り倒した木を供養する踊りを踊っていた」
一条「今彼らは自分たちでそれを踊っているんじゃないでしょうか」
ルル「でもなんでリンボーダンスなわけ?」
一条「リンボー(辺獄)というのはキリスト教でいうこの世と天国の狭間の世界のことなんだ」
一条「役目を終えて昇天したいのにできない、そんな哀しみをファントムたちはリンボーダンスで表現しているんじゃないだろうか」
和泉「キリスト教のリンボー(辺獄)…それがリンボーダンスの語源なんですか?」
一条「いや、何の関係もないけど」
ルル「ウソかよ!?」
本編ではこの会話のあと、付喪神の気を晴らすためと言って例のリンボーダンスシーンがある。
「退治する側が踊る」という要素に加え、人間に恨みを持つ電気属性のある木(材木)の妖怪...というと、単なる付喪神キャラクターというより、もしかしてこれは『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する「逆柱」のオマージュなのでは? という気がするのは考え過ぎだろうか。考え過ぎだろうな。
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警備ロボットのファントム
(『無彩限のファントム・ワールド』第2話「迷惑UFOをやっつけろ!」より)
第2話に登場したファントム。
阿頼耶識社の廃工場でかつて稼働していた警備ロボットがファントム化したもの。
無数のドローンのファントムを操り、スピーカーから強力な音波を発することができる。
以下、第2話の会話より。
和泉「一条君、今のファントムは何だったんでしょう。また付喪神ですか?」
一条「多分。でも、増殖したり自己進化したり、こないだの電柱とはまた別の種類だと思う」
どうやら「付喪神」にもいろいろと種類があるらしいことが伺える台詞。
ロボットの「付喪神」という存在がすんなり受け入れられているあたりが、昨今の付喪神キャラクターの多様化を感じさせる。
まあ、作品の性格として考えると、上記の「付喪神」の説明と、出現した『ファントム』の本来の設定とは実はなんの関係もなくて、高校生である主人公が大雑把な知識を披露しているだけである...という可能性もありうる。あまりこれ以上突き詰めることもできないだろう。
また、原作小説を読めばもう少し何か言えるのかもしれないが、最終的に設定が原作通りとなるかどうかも現時点ではわからない。今後のアニメの展開を見てみるしかないかなという感じか。
第1話のような、よくあるもっともらしい説明を茶化す感じは好きだが、公式サイトを見るとわりと真面目に錯覚の話とかしてるしこのままバカアニメ路線では進まないのかな~。
ライトノベルの大化の改新ネタ : 石川博品『クズがみるみるそれなりになる「カマタリさん式」モテ入門』、野﨑まど『ファンタジスタドール イヴ』
思いつきメモ。
“大化の改新 645年中大兄皇子が中臣鎌足らの協力をえて蘇我氏を打倒して開始した政治改革。孝徳天皇のもとで中大兄が皇太子として実権をにぎり、大化の年号の制定、難波宮への遷都、646年の改新の詔の発布を行った。皇族・豪族による土地・人民の私有と氏姓制度による官職の世襲を打破して、唐の律令制度を模範とする公地公民の中央集権国家をめざした。”
(日本史用語研究会『四訂 必携日本史用語』実況出版,2009年,29頁)
2ちゃんねるやTwitterで『走れメロス』や『山月記』がしばしばコピペ的にパロディになるように、ライトノベルにおいても、学校の授業に出てくる内容というのはネタにされやすい。
だいたいどの教科書にも載っていて、かつ学校の試験によく出るたぐいの知識というのは多くのひとの(とくにその主要読者である中高生の)共通の了解が得られやすいからだ。
たとえば日本史を習えば必ず出てくる歴史上の事件――「大化の改新」もそういった“よく使われる”ネタ元のひとつであるだろう(そういう話の流れなら冒頭で引用するのは山川出版の『日本史B用語集』のほうが適切なのでは? というツッコミは横においておく。手元になかったのだ。許せ)。
『バカとテストと召喚獣』の第1巻に大化の改新の年号暗記ネタが出てきたり、田中啓文に『UMAハンター馬子』という伝奇作品があったりと、探せば他にもいろいろあると思う。
さて、そこで標記の件である。
石川博品『クズがみるみるそれなりになる「カマタリさん式」モテ入門』(ファミ通文庫,エンターブレイン,2011年)。
野﨑まど『ファンタジスタドール イヴ』(ハヤカワ文庫JA,早川書房,2013年)。
ライトノベルSFであるという点を除いてストーリー的にはほぼ接点のない上記二つの作品であるが、どちらの作品も登場人物(や学校等)の名前の元ネタを大化の改新の関係人物や地名から採っている。
クズがみるみるそれなりになる「カマタリさん式」モテ入門 (ファミ通文庫)
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では、上に挙げた両作品の作中では実際にどの人物が何を元ネタにしているのか?
簡単な紹介とともに列記して比べてみたいと思う。
■石川博品『クズがみるみるそれなりになる「カマタリさん式」モテ入門』
1.中野太一(なかのたいち) 主人公。“東京飛鳥学園高校二年生。いわゆる「冴えないボク」”。作中では「キング・オブ・クズ」と称されている(がいうほどクズでもない)。名前の元ネタは中大兄皇子と皇太子。
2.カマタリ・ナカトミーノ・ディ・ムラージ 通称カマタリさん。太一に曽我野三姉妹を攻略させるため、2655年の日本から現代にやって来た。イタリア系日本人。17歳。アヒル口。名前の元ネタは中臣鎌足と連。
3.曽我野笑詩(そがのえみし) いわく、“曽我野三姉妹の次女。東京飛鳥学園高校No.1美少女(ドリームガール)”。名前の元ネタは蘇我蝦夷。
4.曽我野入香(そがのいるか) いわく、“曽我野三姉妹の三女。東京飛鳥学園中学二年生”。名前の元ネタは蘇我入鹿。
5.曽我野由真子(そがのゆまこ) いわく、“曽我野三姉妹長女。甘檮学院大学二年生”。名前の元ネタは蘇我馬子。
6.山背(やましろ) 太一のクラスメイトの男子生徒。カマタリさんが現代に居続けるために時空のはざまに放り込まれたうえ自身に関する記録や記憶を上書きされた。名前の元ネタは山背大兄王。
7.三輪(みわ) 太一のクラスメイトの男子生徒。名前の元ネタは豪族の三輪氏か?
8.物部(もののべ)さん 太一の家のお隣さん。カマタリさんが現代での仮の住まいを得るために急な転勤を余儀なくされ引っ越していった。名前の元ネタは蘇我氏に滅ぼされた豪族・物部氏。
9.中野大海(なかのひろみ) 太一の弟。東京飛鳥学園中学二年生。名前の元ネタは中大兄皇子の実弟・大海人皇子。
※東京飛鳥学園 太一たちの通う学校。高校と附属中学がある。学校名の元ネタは飛鳥時代もしくは飛鳥浄御原宮か。
※甘檮(あまかし)学院大学 曽我野由真子が通う大学。女子大。学校名の元ネタは蘇我氏の邸宅があった甘檮岡(あまかしがおか)。
※東方(あずまの)大学 甘檮学院大学との単位互換制度を実施している大学。学校名の元ネタは蘇我氏の護衛職であった東方儐従者(あずまのしとりべ)か?
※UNEBIグループ 作中の未来世界においてアジア最大の財閥。UNEBIグループの総帥が曽我野由真子の夫となる。名前の元ネタは大和三山の一で蘇我一族の本拠地であった畝傍山か?
ほかに、曽我野入香のクラスメイトとして登場する、宮津千尋(みやつちひろ。通称ロビコ。太一いわく“烈海王みたいな三つ編みの子”)、山野辺珠美(やまのべたまみ。通称ムーピー。太一いわく“おむすびみたいな子”)の2人については元ネタがすぐに思い当たらなかった(山野辺珠美の名字は山辺の道からだろうか?)。
蛇足だが、『クズがみるみるそれなりになる~』では、主人公・中野太一(≒中大兄皇子)に対して元ネタの史実からすると重要に思えるポジションの弟・大海(≒大海人皇子)がいる。彼は物語の本筋にはまったく絡んでこないが、作者のTwitterによると一応続編の構想があったらしく、ヒロインと弟が入れ替わるストーリーになる予定だったらしい*1。
■野﨑まど『ファンタジスタドール イヴ』
1.大兄太子(おおえたいし) 主人公。大学で理論物理の研究をしていたがやがて川越研究所へ移りファンタジスタドールのデバイスとカードの開発者となる。名前の元ネタは中大兄皇子と皇太子。
2.入鹿(いるか) 大兄が小学校六年生の頃に出会ったクラスメイトの少女。名前の元ネタは蘇我入鹿。
3.笠野志太郎(かさのしたろう) 大兄と大学の学部時代の研究室での同期の学生。名前の元ネタは吉備笠垂(きびのかさのしだる)か?。
4.中砥生美(なかとうみ) 大兄の研究室の後輩の女性。名前の元ネタは中臣氏。
5.遠智要(おちいらず) 大兄の研究上の盟友であり複雑系等の情報の分野を専門とする。アメリカからの帰国子女。名前の元ネタは遠智娘(おちのいらつめ)。
記事を書きながら気づいたが、『ファンタジスタドール イヴ』の登場人物の紹介はニコニコ大百科の記事が詳しい。
アニメ『ファンタジスタドール』には日本古代史関連のネタがちらほら見られるようだが、大兄太子(≒中大兄皇子)と遠智要(≒遠智娘)の後継が鵜野うずめとささら(≒鸕野讚良(うののささら))であったという設定がどのあたりの段階で織り込まれたものなのかというのは気になるところ。
それで、これら2つの作品の登場人物の元ネタを比べて何が分かるのかというとまず気づくのが以下2つの共通点だ。
・両作品とも、主人公の名前のファミリーネームを「中大兄皇子」、ファーストネームをその地位であった「皇太子」から採っている(「中野太一」と「大兄太子」)。
・両作品とも、ヒロイン――メインの女性キャラのひとりであり主人公と親しい間柄になりながらも最終的に恋愛関係になることはない――の名前を「中臣鎌足」から採っている(「カマタリ・ナカトミーノ・ディ・ムラージ」と「中砥生美」)。
大化の改新がモチーフとなっている以上、とくに乙巳の変を起こした主要人物である中大兄皇子と中臣鎌足が主役のポジションにいることは当然といえば当然なのだが主人公の名前の付け方まで似通っている点は面白いかもしれない。
では、ここから導き出される結論として何があるかというとここまでだらだらと書いておいてなんだがあえて言うべきようなことはあまりない。
『クズがみるみるそれなりになる「カマタリさん式」モテ入門』はリアルギャルゲー系時間SFラブコメ。『ファンタジスタドール イヴ』はアニメの公式スピンオフとして書かれた『人間失格』テイストの中編SF。
一部設定に同じネタ元があるというだけで本来全く関係のない作品だからである。そりゃそうだ。
設定の元にとなったネタを知らなくとも十分面白いし、また中高生でも元ネタを探りやすいという点で両者ともひじょうに優れた作品であろうと思う。
オチはない。
最近観た映画 : 『独裁者と小さな孫』、『ガラスの花と壊す世界』、『傷物語Ⅰ 鉄血篇』
『独裁者と小さな孫』
1月4日に観た。
話の流れは基本的にロードムービー形式であり、個々の場面の画面づくりが美しいのはもちろんなのだけれど、やはり秀逸なのはラスト。
独裁者が復讐の暴力に打ち滅ぼされたのかどうかはぼかされたまま、小さな民主主義のダンスに希望を見いだそうとするところに強いメッセージを感じる。そういう意味ではとても理解のしやすい作品だといえるだろうか。
『ガラスの花と壊す世界』
1月11日に観た。
人類滅亡後の世界らしいという設定は事前情報として知っていたのだが(というかその設定に惹かれて観に行ったところもあるのだが)、いざ話が始まってみるとそういった前提となる世界観がなかなか語られない。プログラムの少女たちがどこまで続くかも分からないふわふわとした空間で漂う。
しかし全編を通して見ると織り込まれた設定はむしろ多く、時系列も前後するため咀嚼しきれない部分もあった。
とにかくキラキラした美しい風景が次々移り変わり映像的には飽きさせない。
キャラデザと声優目当てで行っても充分楽しめるしむしろそこがメインだともいえる。
個人的にはとくに、すでに多くのヒット作品に出ている種田梨沙・佐倉綾音に比べ相対的にまだ聞き馴染みの少ない花守ゆみりの演技に浸ることができたのはよかった(『ローリング☆ガールズ』好きとしてはなおさら)。
オリジナルアニメ映画としては好印象。
『傷物語Ⅰ 鉄血篇』
1月20日に観た(パンフレットはすでに売り切れだった)。
TV版のアニメ〈物語〉シリーズは、その冗長ともいえる長台詞と抽象化されたアクションシーンが特徴のひとつであるといえる。
TV版では番組の尺の関係もあってか、原作の台詞をなるべく詰め込だ結果として登場人物がみな非常に早口になっていたが、いっぽう今回の劇場版ではTV版に対して極端に台詞が少なく言いまわしもゆっくりとしていた。何より阿良々木君のモノローグがほとんどない。
そういった点では西尾維新原作の映像作品の中でも、現状ある側面においてはもっとも「西尾維新らしさ」が抑制された作品ともいえるかもしれない。
「そど子、ごも代、パゾ美、とは随分ね」 : ソドムとゴモラをモチーフにしたキャラクターのネーミングに関するメモ
思いつきメモ。
アニメ『ガールズ&パンツァー』には「そど子」「ごも代」「パゾ美」というあだ名の風紀委員3人組が登場する。
作中設定では本名に基づくあだ名である(ということになっている)とはいえ、ある意味で秀逸で、ある意味でひどいネーミングだが、フィクションにおけるこのような命名の類例として、十文字青のライトノベル『全滅なう』(一迅社文庫,2011年)に出てくる“堕ちた死神”そど美、“終末の獣”ゴモ蔵という2例のキャラクターが挙げられる。
なお、『全滅なう』の刊行は2011年9月、『ガールズ&パンツァー』の放映開始は2012年10月なので、世に出た順では『全滅なう』のほうが1年ばかり早い(だから前者が優位になるということではなく、あくまで発表順として先行するという話)。
「ソドム」「ゴモラ」を元ネタとしたフィクションのキャラクターはいろいろあるが、あえて日本名っぽくしている例はあまり見当たらず、また検索しても上記の両作品を並べている文章が出てこなかったのでここに書き記しておく。
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